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すごい旅の話

2019-11-15511 view

利尻富士アンバサダーとともに目指す新しいカタチの地域おこし協力隊(北海道利尻富士町)

皆さんは海派ですか? 山派ですか? それとも城派ですか?

何を隠そう、ぼくは毎年150以上の城をめぐりながら城ライターとして生活をしているため、なかなか城以外に興味が向きません。それが今回珍しく、城はないかもしれないけれど、どうしても行ってみたいと飛び込んだのが北海道の利尻島にある利尻富士町。大自然へのあこがれはもちろんですが、かつてニシン漁のために移住者が殺到したという歴史が、心にひっかかっていたのです。

ニシン漁の時代から時が経ち、人口減少が深刻になる中で、2019年8月にSAGOJOを事務局とする「利尻富士アンバサダー」というコミュニティが誕生しました。さらに利尻島外との交流や移住・定住に関わる「地域おこし協力隊」を募集予定。元・地域おこし協力隊の血が騒ぎます。利尻富士町は一体何を目指しているのか?どんな顔ぶれが「利尻富士アンバサダー」として集うのか?利尻富士町の動きを知れば知るほど、気になってきました。

現地に滞在しながら感じた、利尻富士町の〝素の表情〟と合わせてご紹介します。

海あり、山あり、とにかく雄大で豊かな自然

ぼくが利尻富士町を訪れたのは今年、2019年8月初旬。「利尻富士アンバサダー」の一人として、地元の漁業や商業に関わる方々と意見交換を重ねたり、お祭りに参加したり、島の人々と関わりながら、暮らすように旅をしました。

東京から約1200㎞離れた利尻島には、ほかでは見られない雄大で豊かな自然が広がっています。島のどこから見ても真っ青な海が広がり、夜には波音が満天の星空に響くBGMになるんです。こんなロマンチックな夜ははじめてでした。一方で、飛行機を使えば札幌から約1時間、なんと離島でありながら羽田空港から最短で約3時間。余談ですが、ぼくの出身地の奈良県には東京から半日以上かかる秘境もあるので、想像よりはるかに、アクセスが良い場所のように感じました!

利尻島といえば最高級の「利尻昆布」や「ウニ」などの魚介類が有名です。島に行くと、誇りを持った漁師さんがたくさんいますし、参加した島のお祭りではウニが格安で販売されていて度肝を抜かれました。また、漁業とならぶ島の主要産業は観光。サイクリングロードが整備され、のんびりと海や山に身をゆだね、高山植物を探しながら走りまわるのは最高に贅沢です。

そして島の中央部にそびえるシンボルが利尻富士(利尻山)。日本百名山に選ばれた名峰で、北海道を代表する銘菓「白い恋人」のパッケージでもおなじみのその雄姿は、島のどこからでも眺めることができます。

個性豊かすぎる「利尻富士アンバサダー」と住民の議論から、何が生まれる…?

かつてニシン漁が活況だった昭和初期には、出稼ぎ労働者や移住者が集まり、ピーク時の昭和30年には11,234人の人口があった利尻富士町ですが、ニシン漁が不振になるとともに人口減少が始まりました。平成27年には人口2,787人、60数年の間に人口の75%以上が減少しています。

そんな中、移住・定住促進に本格的に取り組むことにした利尻富士町が前提としているのは、「いきなり移住してくれる人を呼び込むのは至難の業」ということ。そこでSAGOJOが事務局となり、まずは利尻富士町の魅力やニーズを発信し、町の課題を解決するために関わっていく旅人を「利尻富士アンバサダー」としてコミュニティ化する取り組みを始めました。

ぼくが滞在した時期に利尻富士町に集まった「利尻富士アンバサダー」は、プロスキーヤー、トラベルフォトグラファー、映像クリエイター、起業家、地域おこし掘り出し人など、多彩で個性豊かすぎる顔ぶれ。一方で、利尻富士町に住む人たちも負けじと個性豊かでした。

滞在中には、「利尻富士アンバサダー」と利尻富士町役場の方々が意見交換する機会もありました。利尻富士町に暮らす人、利尻富士町アンバサダーのように外から来たヨソモノ。そこでは両者の視点がまったく異なることを、意見交換の中で感じました。

たくさんの意見が飛び交った中で特に印象的だったのは、利尻富士に対する想いでした。利尻富士町アンバサダーからは、自然豊かな利尻富士の希少性をもっと発信していくべきという意見が出ました。一方で、利尻富士町に住む方からは、利尻富士の登山路が傷んできているので、将来登山ができなくなるかもしれないという不安に関する意見が出ました。

ただし視点は異なっても、それぞれの立場で利尻富士の魅力を伝えたいと思っていることには変わりなく、回数を重ねていけば、きっといい答えが見つかるはずだと、ぼくは強く感じました。

滞在の中で強烈に感じたのは、地域の方からの新たなカタチのコミュニティへの期待感。利尻富士を例にとっても、熱い想いをもった方たちがたくさんいらっしゃいます。想いをぶつけられるコミュニティがあれば、きっと、想いはカタチになっていくはず。そのために、ただ移住者を増やそうとするのではなく、利尻富士町のファンを増やすことで、人口減少という課題に向き合うコミュニティづくりを目指しているのです。

「利尻富士町にくる旅人が、ただ観光するだけでなく、何かしら少しでも利尻富士町に対して価値を提供してくれたら、島内でもっと面白い化学反応が起こるのでは」と話すのは田村祥三町長。「昆布干しの体験など、観光だけでは味わえない魅力も体験し、情報発信してほしい」と続けます。

滞在中は、利用者が伸び悩む公共施設の活性化策を考えるワークショップも開催。メンバーは各人、情報発信をしながら、長期的に取り組む必要のある課題については今後の施策に活かすべく、提案を行っていきます。

利尻富士町暮らし体験の拠点は、Wi-Fi完備の〝小学校〟!

利尻富士アンバサダーが滞在した拠点は、利尻空港から歩いて約10分の距離にある「本泊(もとどまり)小学校」跡地を利用した施設。廃校…と聞いていただけに、正直、どんな環境なのか当日までドキドキしていたのですが、訪れてみると、地域のお母さんが子どもを連れてやってきていたり、空き教室で学習塾が開かれていたり、明るい印象でホッとしました。

学校なので、お手洗いや調理スペース(旧家庭科室)があるのは当然かもしれませんが、シャワー室やWi-Fiを完備しているのはありがたいところ。さらに校舎内から利尻富士が見える恵まれたロケーション。また、地元の子供たちも遊び場として利用しているので、地元の方とのコミュニケーションがいつの間にか始まっています。夏も涼しく、心地のいい風が校内に吹き込んでいました。

島内の足としては、ママチャリやマウンテンバイクが多数常備されていて、貸してもらうことができます。外周約60キロと、離島としては全国で18番目に大きい利尻島。正直、島内すべてを自転車で移動をするのは苦労しますが、体力自慢の利尻富士アンバサダーは、1日でぐるっと1周走り切っていました。普段自転車に乗らないぼくは島内一周を断念しましたが、それでも足の筋肉痛に悩まされていたことは内緒です。

利尻富士アンバサダーは滞在中、夕方近くになると小学校から自転車で約10分のスーパーやコンビニ(セイコーマーケット)に買い出しに行って、みんなで夕食を作って食卓を囲む滞在を楽しんでいました。海に沈む夕日に向かってペダルをこいで、かつて家庭科室や理科室だった場所で調理するのは、わくわくする体験でした。

アンバサダー制度と連動して、移住や定住をサポートする珍しいポジション「地域おこし協力隊」を募集

アンバサダーの制度が始まり、地域のファンを増やしていこうとする利尻富士町では、移住や定住をサポートするポジションを、地域おこし協力隊(※脚注参照)として募集することになりました。

新たに募集するのは、利尻富士アンバサダーをはじめ利尻島外から地域に関わる人たち(関係人口)や移住者の受け入れ窓口として、移住定住を促進し、関係人口を拡大していくポジション。利尻富士町にとっても初のポジションですが、地域のアンバサダー制度と連動するかたちで地域おこし協力隊を募集するのは、全国的にも珍しい試みかもしれません。

水産業や商店に関わる方々、利尻富士町役場、そして利尻富士アンバサダーが集まって意見交換をした際にも、新たな交流拠点への期待や、窓口になってくれる人材の必要性が確認されたところです。

地域おこし協力隊の募集概要はこちらを参照ください。

江戸時代から今なお続く移住者の流れ

利尻島はもともと移住者が多い島でした。江戸時代末期から出稼ぎの漁民が増え、明治時代初期にはニシンの豊漁を夢見る移住者が激増。青森県や秋田県、新潟県、富山県、福井県、鳥取県など日本海側を中心に、各地から人々がやってきたので、今の島の住民たちも、かつての移住者の末裔が少なくないのです。

戦後、ニシン漁が下火になったことで移住者が減り、やがて各出身地の記憶は失われつつありますが、それでも富山県や鳥取県の移住者による獅子神楽が続けられているなど、利尻島のルーツを偲ぶことができます。

また、当時とは事情は異なりますが、移住者が増えて栄えた歴史があることも手伝ってか、島の住民は開放的で、今も島の行政や産業に関わっている移住者がいます。実際、昆布漁取材中に見学させていただいた昆布商店で干した昆布を運んでいたのは、利尻島外出身で、利尻富士町に数か月間滞在しながら、昆布漁を手伝っている若者たち。利尻富士町役場の若手の方にも、北海道の札幌付近や、東京から移ってきた方がいます。このほかにも、結婚を機に利尻島外から移ってきたという方にはたくさん出会いました。

地域おこし協力隊の制度をきっかけに島に移住し、任期終了後も利尻島内で活動を続ける方もいて、現在「利尻島ファミリーキャンプ場ゆ〜に」の管理をしながら、キッチンカーで売店を営業する澤田知仁さんはその一人。出身は青森県で、リゾートバイトで利尻島の自然に魅かれて訪ねてきたのがきっかけになったそう。あわただしいキャンプ場管理の合間にお邪魔すると「冬はたしかに寒いのですが、慣れればそんなに気になりません。島の人とお酒を飲めば飲んだだけ、仲良くなるのが早くなります」と、利尻富士町に溶け込むコツを教えてくれました。

仕事と生活の両面をサポートしてくれる利尻富士町役場の方々

仕事と暮らしの両面で地域おこし協力隊をサポートをしてくれるのは利尻富士町役場の皆さん。利尻富士町総務課課長補佐の種谷卓(たねやすぐる)さんは、6年間島外で暮らしたのちUターン。普段はおだやかな方ですが、利尻富士町の将来について議論が活発になると熱い想いがあふれ出します。「今から仕組みを作らないと将来的に人口は減る一方です。利尻富士アンバサダーなど、現在取り組んでいる試みが下火になるイメージはありません」と種谷さん。

種谷さんとともに利尻富士アンバサダーや地域おこし協力隊をサポートしてくれるのは、若手の職員さん。利尻富士町役場には若手職員が多く、しかも利尻島外から移ってきた方も多いので、町での暮らしに不安があれば、心強い相談相手になってくれます。総務課企画調整係の岩垣謙太(いわがきけんた)さんは利尻富士町生まれ。お祖父様が漁師の岩垣さん、海辺を案内する際には目の色が変わり、機敏な身のこなしで、利尻富士アンバサダーをエスコートしてくれました。

総務課企画調整係の近藤稜起(こんどうりょうき)さんは北海道北広島市出身。利尻富士町での生活を始めて3年目に入っています。「内陸から移り住んだため、海がある利尻島での生活は同じ北海道とはいえ全く別世界。でも役場には移住者が多いので、すぐに仲良くなれました」と近藤さん。

利尻富士町に来てとても印象的だった体験が、島の人と距離を縮める秘策「やきやき」! 俗に言うバーベキューですが、ホタテやホッケといったおいしい島のグルメを一緒に食べていると自然と会話が弾んでしまう魔法のようなコミュニケーション方法です。よく見るとバーベキューの装備が多くの家で見られます。

利尻富士アンバサダーとして島を訪れた際も、おいしい魚介類を食べて欲しいと、岩垣さんや近藤さんをはじめとする若手の職員さんたちが、心を込めて「やきやき」を振舞ってくれました。

気づけば一緒に卓球をしたり、訪ねてみたい旅先の話で盛り上がったりと、あっという間に仲良くなっていました。地域おこし協力隊として移住しても、きっと頼れる味方になってくれるでしょう!

島ぐらしで、利尻富士アンバサダーが見たものは?

最後に、ぼくと寝食をともにした利尻富士アンバサダーの旅人たちの、利尻富士町滞在を経ての感想をご紹介します。早朝から利尻富士町に登山をしたり、いつの間にか漁師の自宅に招かれていたり、ふらっと利尻島を一周していたり。。。それぞれに利尻富士町を満喫するアグレッシブさには驚愕の連続でした。利尻富士町で濃厚な生活を送った5人の声、利尻富士町暮らしのヒントにしてみてください!

河口 TKY 尭矢さん(静岡県出身/プロスキーヤー・トラベルサーファー)

2019年4月に冬の利尻富士をスキーで滑り、夏にも来たいと思って再訪しました。年間150以上の山に登っていますが、利尻富士のロケーションはハンパないです。山頂から360度のパノラマが広がり、海を見下ろせる山岳はほかにありません。この利尻富士の価値を、地元の方々が見落としているのがもったいないと感じました。山だけでなく、海もポテンシャルが高いです。早速、秋にまたサーフィンしに来たいですし、用具をそろえて釣りもしたいですね!

瀬戸 波音さん(広島県出身/トラベルフォトグラファー)

実家が田舎ということもあり、田舎が好きです。利尻島は、緑と青空にまっすぐな道がのびていて、どこもかしこも「引き算が不要」な贅沢な景色ばかり。〝SNS映え〟しますね。今度は季節を変えて、秋の紅葉や、一面の銀世界を体験したいです。昆布を切っているおばあちゃんがとってもあったかくて、自分のおばあちゃんのようでした。(翌朝に出発を控え)離れるのがすごく寂しいです。。。

笠井 裕さん(埼玉県出身/起業家)

自然が豊かなことは知っていましたので、まずは満喫。初日から利尻富士に登ったり、島内一周サイクリングをしたり、たくさんの体験をしました。色がついていない「素朴」さがいいですね。そして島全体がパワースポット。利尻島に来たら、まずはとにかく自然を楽しんで欲しいです。それから、昆布漁の歴史を学んでから散策すると、さらに楽しくなりますよ。

田中 寛人さん(和歌山県出身/地域おこし仕掛け人)

北海道の暮らしに興味があって来ました。まずは『利尻富士町史』を読み込んだ後、実際に漁師さんに声をかけて話をうかがっていると、気づけば自宅に招かれている、そんな距離の近さを感じました。港付近にはネコがたくさんいますので、もっと活用できたら面白いはず。住民もヨソモノも情報収集できるような、図書コーナーもあるといいですね。

サトウシミズ パトリッキ 悠斗さん(千葉県出身/映像クリエイター)

飛行機を降りた直後、利尻空港で見た利尻富士のインパクトには圧倒されました。利尻島には映像に残したい絶景ばかりが広がっています。特に利尻富士山頂からの景色は、全面に海が広がる見たこともない景色でした。今度は海でシュノーケリングや、自転車で利尻島内一周したいですね。カフェやギャラリー、ちょっとしたご飯を食べるところがもうすこしあるといいなと思いました。

サトウシミズ パトリッキ 悠斗さんが制作した利尻富士アンバサダーのPRムービーがこちら

今回ご紹介した利尻富士アンバサダーの声は、 約1週間の滞在を経た上での率直な感想です。季節や滞在する人によって、感じ方もそれぞれかもしれませんが、ご興味を持った方は、利尻富士町で新たな挑戦をしてみてはいかがでしょうか?

現在、利尻富士町の地域おこし協力隊で求められている移住・定住窓口は、自身の得意分野を生かしながら、人脈を広げるきっかけにもなります。利尻島で暮らしながら、大自然を満喫できる絶好のチャンスですよ。

▷利尻富士町の地域おこし協力隊に興味がある方はこちら

▷【11/29(金)イベント開催!】ソトモノって地域に何ができるの? - 酒とつまみ片手に最北島ぐらし(利尻富士町)の未来を考えてみようMeetup

(※脚注)
地域おこし協力隊とは、「都市地域から過疎地域等に移住し、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援、農林水産業への従事、住民の生活支援などの『地域協力活動』を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組(総務省HP)」です。平成30年度には5,359名、受け入れ自治体は1,061地域にもおよびます。

ライター:藪内 成基

奈良県出身の利尻富士アンバサダー。元地域おこし協力隊(大分県竹田市)。国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。「城びと」(東北新社)や「サライ.jp」(小学館)への寄稿のほか、旅行誌や城関連図書の制作に携わる。異業種とコラボし、城を楽しむ体験プログラムを実施している。

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