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すごい旅のハウツー

2016-04-087940 view

スポンサーを獲得した「旅の企画書」公開!自転車で西ヨーロッパ一周『2010 ツール・ド・ヨーロッパ』中村洋太

2010年の夏、大学4年生だった私は、スポンサーを集めて自転車で西ヨーロッパ12ヶ国を一周しました。

高校生のときに、自転車でフランスを一周するレース「ツール・ド・フランス」をテレビで観て以来、「いつかヨーロッパの美しい風景の中を自転車で走りたい」という夢がありました。

もともとは社会人になってお金を貯めてからやろうと考えていましたが、2010年1月のある日、社会人の方にその夢を話したところ、「就職したら、何カ月も旅をする時間なんてないよ。やるなら学生のうち」と言われ、その場で「今年の夏に行くしかない」と覚悟を決めることに。

当時はちょうど就職活動や研究室への配属などが重なり、アルバイトで旅費を貯める時間的な余裕がなかったので、企業にスポンサーを募るという方法を取りました。

その結果、企画書を作成してから旅に出るまでの約3ヶ月間で、15社の企業協賛と300名からの個人協賛を獲得。ヨーロッパ往復航空券・ロードバイク・一眼レフ・電子辞書などの物資提供のほか、約70万円の資金を集めました。

今回は、そのときの私の企画書を公開しつつ、作成時に意識したことやこだわった点、また多くの方からアドバイスをいただいて直した部分などをご紹介したいと思います。

 

『2010 ツール・ド・ヨーロッパ』企画書公開!

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これが、私がした旅『2010 ツール・ド・ヨーロッパ』の企画書です。兄や社会人の知人に見せてアドバイスをもらいながら、7回ほど作り直して完成にいたりました。

作成時に大切にしたポイントを解説します。

1. A4用紙1枚に収める

最も意識したのは、「A4用紙1枚」で企画書を作るということ。

何十ページにもわたる、想いのこもった企画書を作成しても、読んでもらえなければ意味がありません。協賛をお願いするということは、忙しい社会人の方から、貴重な時間を割いていただくということ。

そのため、なるべく失礼のないよう企画の概要だけわかる内容にし、「ご興味ありましたらブログを覗いてみてください」「応援していただけたら幸いです」という気持ちを込めて、“A4用紙1枚に収める” と決めました。

書きたいことはたくさんありましたが、重要な情報以外はうーんと削り、書き切れなかった想いは直接お会いして伝えることに。そのためにも、ひと目見たときに「おもしろそうなやつだな」「一度会ってみるか」と思っていただけるような企画書作りを意識しました。

2. 企画の「社会的な意義」を説明する

当たり前ですが、「旅がしたいのでお金をください」というスタンスでは「自分で貯めろよ」と言われてしまいます。自転車でヨーロッパを走ることは個人的な夢でしたが、どうしたらこの個人的な夢を社会的に意義のある活動に繋げられるだろうか、と考えました。

その結果、「若者の海外旅行離れを食い止める」という目標を掲げ、「現状の課題」と「その対策として自分が行うこと」を企画書内に盛り込みました。

3. 企画の楽しさは伝わっているか

最初の企画書を見せたときに、「せっかく楽しい企画なのに、パッと見で全然伝わってこない」と言われました。そこで、写真や色、地図を入れ、「より読みやすく、よりわかりやすく」を意識して作り直しました。

左が最初につくった企画書。多くの人に見てもらい何度も作り直した。

特に入れたかったのは、ルートの地図。どういうルートで走る予定かを具体的に伝えることは、企画の本気度を示すことにも繋がります。イラストレーターを扱えなかったので、大学の友人にお願いして作成してもらいました。

4. 信頼を得られる内容か

私は特に有名なサークルに所属しているわけでもない、無名の大学生でした。当然、私のことを知らない読み手からすれば、「この人は、信頼できる人間なのか」と第一に思うはずです。

どこまでの本気度があるのか、そもそも自転車でそれだけの距離を走る体力のある人間なのか、ただの個人的な旅行ではないのか……などなど、さまざまな疑惑があったはず。

「安心して協賛していただけるためにはどうすればいいか?」

私はオリンピックにも出場した、自転車競技の日本チャンピオンの方に会いに行き、想いを伝えることにしました。すると、この企画に賛同していただけ、握手している写真を企画書に掲載する許可を得ました。知名度の高い方に認められることで「この人は本気なんだな」と読み手にも伝わる企画書にできたと思います。

他にも、プロフィール欄に「2009年夏には自転車で西日本を一周。2700kmを走破」と過去の実績を書くことで、企画実行者の信頼性もアピールしました。

広く公開することのリスクも考えよう

すべてが完璧だったかというと、そういうわけではありません。反省点もあります。

振込先を載せてしまった

今はクラウドファンディングサイトがあるので協賛金の支払い方法も整っていますが、当時はまだこういった企画自体が一般的ではありませんでした。また、インターネットの苦手なシニア層にも当たる予定だったので、振込先を載せた方が親切だろうと思い、企画書に書いてしまっていました。

しかし、当時は振込先を公開することのリスクを考えていませんでした。

後で知ったことですが、「押し貸し」などの被害に遭う可能性もあります。そのため、広くたくさんの人へ見せる企画書で自分の口座を公開することは控えた方がよさそうです。

「想いが伝わり、思いがけない広がりがあった」

たくさんの人たちとのふれあいが、何よりも思い出に残っている。

この企画書は、飛び込み営業で企業の担当者に直接お見せしたり、何百人もの個人に配ったりしましたが、正直なところ、企画書そのものについて何かを言われた記憶はあまりありません。ですが、たくさんの方に「応援したくなる企画」と言っていただけ、実際に15社の企業と300名の個人から協賛をいただくことができました。

ひとつおもしろかったのは、「コピーして知人にも配ったわよ」と年配の女性から言われたこと。まさか自分のお会いしていない方にまで企画書が届くとは思いもしていませんでした。

また他にも、企画書を配った方から後日「協賛金を振り込んでおきました」とメールがあったので口座を見てみると、なんと10万円が振り込まれていました。ひと口1000円にしていたので、これは桁を間違えたのだろうと思いご連絡すると、

「間違いではありません。私がそのお金でおいしいものを食べるよりも、中村さんに使っていただいた方が生き金になると思いました」

と返信が。企画書には想いを強く込めることで、それが「信頼」へとつながり広がっていくのだろうと思います。

これから旅を企画にしたいと思う方へ

はっぴを着てドイツの街を走ってみたところ、大注目を浴びた。

私の場合、「まず自分で思ったとおりに作って人に見てもらい、改善を繰り返していく」というやり方が良かったのかなと思います。

企画のおもしろさやオリジナリティを表現するのであれば、形式に縛られないことも大切です。「何を伝えたいのか」という一番大切なことを極限まで考え、企画書に表現してみてください。

協賛を集める以上は大きな責任が伴いますが、やりがいはあります。そして、私はこの協賛集めの経験を通して、本当にたくさんのことを学べました。本気で「旅をしたい」と思うのであれば、ぜひ皆さんにもチャレンジしてほしいと思います。

文:中村 洋太 編集:新 拓也