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すごい旅の話

2019-05-12376 view

「正直、自分に負けて帰国した」くまがい けんすけが語る、それでも価値がある自転車旅の魅力

2015年6月から約1年間、世界を自転車ひとつでまわる旅へと出発した くまがい けんすけさん。当時の相方であるロードバイクは現在、次の旅人へとバトンパスすべく、想いを受け継いでくれる旅人をSAGOJOで募集しています。

今回は、そんなくまがいさんが経験したアラスカ〜メキシコ縦断・自転車旅の様子と、体ひとつ自転車ひとつで行くからこそ実感できる「旅の魅力」について、ご本人にお話を伺いました。

くまがい けんすけ(株式会社はじまり商店街 共同代表取締役)
商社で6年勤務後、2015年に退社し自転車で日本一周を実行。アラスカ→カナダ→アメリカ西海岸→メキシコの12,000km を1年かけて自転車で走破。帰国後はYADOKARI株式会社代表と共に BETTARA STAND 日本橋プロジェクトに参画。現在は、株式会社はじまり商店街の代表として人と人がつながる場を創造する。▷Twitter

スポンサーを獲得し、3年で4万km走行する世界一周旅を計画

ーーそもそもどうして「アメリカ大陸縦断・自転車旅」を始めたのでしょうか?

もともとは「世界一周」する自転車旅の予定だったんですけどね……(笑)

ーーそのあたりの経緯も教えてください(笑)

旅に出るまでは商社で6年間、会社員をやっていました。何か人と違うことがしたいなと思って、新卒で入社した頃から6年経ったら辞めようと考えていました。

でも、具体的に何がしたいかは決まらなくて。MBAを取るとか起業するとか、いろいろ悩んでいました。

そして社会人4年目の時に、ある本に出会ったんです。石田ゆうすけ著『行かずに死ねるか! ―世界9万5000km自転車ひとり旅(幻冬舎文庫)』という本で、その内容に引き込まれて、世界一周の自転車旅に出ようと決めました。

ーーなぜ「自転車 × 世界一周」だったのでしょうか?

父が使っていたロードバイクを譲り受けたこともあって、自転車にはよく乗っていました。「東京→大阪」とか「札幌→函館」とか、長距離をよく走っていましたね。

それに学生の頃からバックパッカーで社会人になっても一人旅を続けていたりと、昔から旅が好きなんですよね。英語の勉強をずっとしていたこともあって、自分にも世界一周できるかもしれないと思ったんです。

やると決めてからはとにかく必死に動きました。会社を辞める準備と旅の準備を並行して進めて、退職後もまずは日本一周をしたり、自転車屋さんで働いたり。そして2015年の6月に、世界一周を目指して日本を飛び立ちました。

ーーどんなルートでまわる計画を立てたんですか?

アラスカから入って南米まで縦断、それからヨーロッパに飛んで、アフリカに寄りつつシルクロードから帰ってくるというルートです。3年で走行距離4万kmの世界一周の予定でした。

ただ、単に世界一周するだけでは二番煎じなので、テーマを持っていこうと思ったんです。「旅 x 仕事 x ライフスタイル」を追求しながら、モビリティの可能性を広げて「変化を恐れずに挑戦する文化をつくる」ことを掲げていました。

企業にスポンサーになってもらおうと思い、旅行中にライティングや撮影をする代わりにスポンサーになってくれないかとスポーツ用品の企業や製薬会社、自転車関連企業や出版社などへ営業してプレゼンしました。

最終的には5社ほど巻き込んで、満を持して世界一周自転車旅をスタートさせたんです。

世界一周を断念。3年の予定が1年で帰国することに

でも、結論から言うと、世界一周できずにアメリカ縦断だけで帰国してしまったんです。

アラスカから始まり、カナダのジャスパー、アメリカのシアトル、ポートランド、サンフランシスコ、ロサンゼルスと走って、メキシコのラパスまで。12,000kmで僕の自転車旅は終了しました。

ーー旅の途中でやめた理由は?

自分が求めていたものは、旅じゃなくてもよいと感じたんです。

旅の期待値って、自分の経験の外側にあると思います。それによって自分のキャパが広がって、人間として成長できることを期待すると思うんですが、自分の心持ちや環境を変えれば、日本国内にいても自分の枠を広げられることに気づいたんです。

さらに、本来は非日常のはずなのに、いつしか自転車旅が日常になってしまったんですよね。

ーー自転車旅が日常になった、というと?

朝起きて、テントを畳んで出発の準備をして、自転車で走って、夜になったら寝床を探す。それがルーティン化してしまったんです。自転車で走っていると食糧を恵んでくれる人も多いのですが、それが当たり前に感じるようになっちゃったんですよね。

人のやさしさに慣れてきちゃった自分に気づいて、これは良くないなと。そしてこの先の自分の毎日に想像がついてきて、正直旅がつまらなくなってきちゃったんです。

自分に負けて帰って来た、と言えるかもしれません。自分は達成できる人間だと思っていたんですが、途中帰国したことによってその自信も崩れ落ちて……正直、帰国後は人にも会えなかったし、本も読めない状況でした。

だから、この旅については振り返らないようにしていたくらいです。最近になってようやく考えられるようになり、あのときの自転車を寝かせておくのがもったいないと思ったんです。

ロードバイクは安いものじゃないので、自転車旅をしたくても買えない人がいたら、提供すれば良いサポートになるのではないかと。自分が世界一周したいと思ったように、やりたいことがある人に使ってほしいというシンプルな想いが湧いてきました。

初代ロードバイクは盗まれた。今あるのは2代目

ーーロードバイクとの思い出を教えてください。

実は、初代の自転車は盗まれてしまったんです。サンフランシスコのスタバで、仕事を終えて駐輪場に戻ると愛車がなかったんです!

いつもは太い鍵と細い鍵の2つを付けていたんですが、慣れもあってそのときは細い鍵しかつけていなくて。それでやられちゃいました……。自転車が置いてあった場所に鍵だけがポツンと置いてあって、最初は何にも考えられずにボーッとその区画を一周ながら歩いていました(汗)

幸い保険に入っていたこともあって、現地の自転車屋さんで新しいものを買えたのですが……皆さん保険には必ず入りましょうね!(笑)

なので、今回提供する自転車は2代目なんです。サンフランシスコからメキシコのラパスまで、4ヶ月くらいしか乗っていないので割ときれいだと思います。

ーー当時はどういった生活をしていたんですか?

街から街を目指して走っていました。街に滞在中はスポンサーとの仕事があったので、記事を書いたり、自転車と景色の撮影をしたり。

移動中はずっと森や荒野を走っていて、テント泊だったのでとてもワイルドな生活でしたね。アラスカやカナダにいたときは200kmくらいずっと食糧を買う場所がなくて死ぬかと思いました。

一応、旅人向けのマップがあるので目星はつけて走るんですが、そのマップが紙媒体なので情報がアップデートされてなく、行ったら廃業してたことも。お店を見つけるたびに水などを買い込むんですが、やっぱり自転車なのでそこまで多くは積めないんですよね。サバイバルが好きな方には向いていると思います(笑)

自転車は旅と相性の良いツール

ーー盗難という大変な経験もされましたが、自転車旅の良さはなんだと思いますか?

自転車は旅と非常に相性の良いツールなんですよ。自分をエンジンとして進み、自分の力で切り開いていける。

また、「旅の解像度が高い」というか。電車や車やバイクで走るよりも一歩ずつ地に足をつけて進むから、風景もその土地の文化もよく見える。カナダでは森と山ばっかりだったのに、メキシコに近づくにつれてサボテンが生えてくる。徐々に変わっていく景色の様子を見れるのは自転車旅ならではですね。

もちろん景色だけじゃなくて、人々の暮らしや価値観など、文化も徐々に移り変わっていく様子を感じられることもあって、解像度高くその土地を知ることができるんだと思います。

ーーくまがいさんのロードバイク、どんな人に引き継いでほしいですか?

自転車というツールをつかって、新しい文化を作ろうとしてくれる人が良いですね。これからの時代は自動運転が当たり前になると思うんですが、そんな時代だからこそ、自分自身が移動することでコンテンツとなり、価値につながると思うんです。

「自分が価値になる」ということを表現してくれる未来志向の人だと嬉しいですね。

こう言うと難しく感じるかもしれませんが、必ずしも自転車に乗り続けて世界一周する必要はないんです。一筆書きの旅じゃなくたっていいし、国内だっていい。もし僕がもう一度自転車で旅するんだったら、間違いなく一筆書きではなくポイントを絞って走る旅にしますね(笑)

新しい旅へ、出発しませんか?

途中帰国という苦労を味わいながらも、旅の経験を「ポジティブだった」と語る くまがいさん。彼のように、あなたも自転車の旅に出発してみませんか?

現在、くまがいさんが実際に使用したロードバイクを受け継いで、新しい旅のストーリーを重ねてくれる旅人を募集中です。興味のある人はぜひ下記よりご応募ください。

▷ 先輩旅人のロードバイクを受け継ぎ、新しい旅へ出発・発信してくれる旅人を募集!

最後に、くまがいさんから未来の旅人へメッセージをいただきました。

「幸福が現実となるのは、それを誰かと分ちあったときだ」(映画『イントゥ・ザ・ワイルド より)
1人で超えられる壁なんてありません。自転車に乗って多くの方と出会い、話し、共有してください! まだ見ぬチャリダーに出会えることを心より楽しみにしています。