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すごい旅の話

2019-03-31525 view

地域おこし協力隊が、町のポテンシャルを引き出す━━協力隊と町民が、手を取り合う富山県朝日町

「富山県朝日町の、地域おこし協力隊について取材をお願いしたいのですが、朝日町ってご存じですか?」

2月某日、編集部から電話越しにこう聞かれた私は、はて? と首を傾げました。

富山県といえば……黒部ダム。ユネスコ世界遺産に登録された、合掌造りの里山である五箇山や、チューリップなど、思い浮かぶ「モノ」はあるものの、町に関しての知識はほぼゼロ。

「すみません、一度も聞いたことがないのですが……私が取材担当で大丈夫でしょうか?」
「あ、大丈夫ですよ! すでに知っている人より、初めて町に触れる人のほうがベターなので」

その言葉の意味を知るのは、現地で町の人たちと触れ合い始めてから。

地域おこし協力隊の応募を考えている方も、いまの時点で町について詳しくなくても大丈夫! むしろ富山県朝日町は、知らないからこそ活躍してきた先人たちが、たくさんいる場所だったのです。

富山で一番過疎化が深刻だと言われていたのに、今では「一番元気でエネルギッシュ」と言われる朝日町

より多くの人に「朝日町の協力隊になってみたい!」と興味を持ってもらうために、いざ富山!

東京駅から北陸新幹線で約2時間半。黒部宇奈月温泉駅から車で20分ほどの距離に、富山県の東端・新潟県との県境に位置する朝日町があります。

海抜0メートルのヒスイ海岸や、標高3,000メートル級の北アルプス朝日岳・白馬岳など、自然に恵まれた町。気候は概して比較的温暖かつ多雨多雪であり、山岳地帯は、杉、松、落葉樹などの木材資源も豊富です。また、富山県は日本一災害が少ない場所と言われていて、地震については過去30年以上もの間、震災回数が全国最少。安心して暮らしやすい場所と言えます。

しかし若者が町から減り続けたことで過疎化が深刻になり、このままでは本当に町がなくなってしまう……という窮地まで追い込まれる事態に。そんな時に町の改革者となったのが、現町長である笹原靖直さんでした。

2014年に就任してから地域おこし協力隊の受け入れに力を入れ、少しずつ町は活性化していったそうです。現在、朝日町で活躍している地域おこし協力隊は、なんと17名!

他所から訪れた協力隊員と上手に手を取り、成功したモデルケースとも言えます。

「朝日町の町長は、本当にアツい人なんです」

黒部宇奈月温泉駅に到着すると、今回の取材旅のアテンドをしてくださる善田洋一郎さんが迎えてくれました。

善田さんは、朝日町役場・地域振興課のなかで移住定住相談員を務める方で、ご自身も6年前、奥さんとの結婚を機に朝日町へ移住してきたそう。

役場に向かう車中で「町長はどんな方なんですか?」とお伺いすると、「笹原町長は、めっちゃアツい人です」と即答をいただきました。

「町議会議員時代、朝日町の活気を取り戻すために、時には涙を流しながら気持ちを訴えていたエピソードはよく聞きます」と、善田さん。
相当な覚悟と思いを持って、町に変革をもたらしてきた方だということが伝わってきます。

行政の力だけでは「地域おこし協力隊」は盛り上がらない。民間の人々の協力があってここまできた

朝日町に初上陸して、真っ先に向かった先が町長室。まずは誰よりもこの町を愛している笹原町長から、地域おこし協力隊との関係を伺うことにしました。

現朝日町長である笹原靖直さん。この町で生まれ育ち、建材卸業に勤めていたものの、地区出身の町議に「あなたになってほしい」と言われ続け、2010年8月に町議に就任。

朝日町が地域おこし協力隊を初めて受け入れたのは、今から4年前の2015年。そこには、消滅可能都市と言われていたこの町を、どうにか活気づけたいという思いがありました。とはいえ、最初に来てくれた協力隊とは行政もうまく距離感をつかめず、決して上手にコミュニケーションが取れていたとは言えなかったそう。

そんな中でも、「閉鎖的で諦めムードが漂っていた町のチェンジメーカーとなってくれたのは、やはり新しい視点を持った協力隊でした」と笹原町長。
生まれ育った場所も、世代も価値観も、何もかも違う新しい仲間たちは、町民たちが今まで “当たり前” だと思っていたものに、いちいち感動してくれたそうです。

春には、チューリップ・菜の花・桜並木・残雪の白馬、そして朝日岳が輝くあさひ舟川「春の四重奏」。

夏には、ヒスイ海岸での海水浴。遊んだ後は、朝日町の名物「タラ汁」という贅沢な
塩分補給。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

朝日町観光協会の『秘境の北又散策』? 小川温泉から朝日岳登山コースの基地となる北又谷周辺をのんびり散策してきました。 雨のおかげでしっとり艶めき、輝く紅葉が美し過ぎる最高の日! 山ガイドさんから、お花や山菜、キノコ、昔の山での暮らしのお話しを聴きながら、山でゆったり過ごす時間を和気あいあいお楽しみいただきました。 お昼は、北又小屋できのこたっぷり汁? みなさん、2杯3杯とお代わりされて大人気♪ さらに開湯400年の小川温泉さんで汗を流してさっぱり! 疲れも取れました〜(*´Д`*) 北又小屋は、本日が小屋締め。 来年の初夏以降にまた遊びにいらして下さい♪ #秘境 #北又散策 #北又谷 #北又小屋 #朝日岳 #紅葉 #もみじ狩り #吊り橋 #三段滝 #北又ダム #きのこ汁 #小川温泉

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秋には、朝日岳登山コースの基地となる、北又谷周辺で行われる「秘境の北又散策」。

冬には、銀世界を独り占めしながら「小川温泉」で露天風呂。

災害が少ないうえに、四季折々の景色と、海と山の幸がこんなにも豊富であることを「当たり前だと思っていた」というのに私も驚きましたが、やはりずっとそばにあるものの魅力こそわかりづらいもの。

地域おこし協力隊に「素敵な場所ですね」と言われるたび、町全体が誇りを取り戻していくようだったと、笹原町長は言います。

また、町に新たな風をもたらしてくれた協力隊を、一番サポートしてくれたのは民間の人たちだったそうです。

行政と協力隊とでは、どうしても距離が生まれてしまう。そのフォローをするように、積極的に行事に参加し、近くに住んでいる隊員たちとのコミュニケーションを取ってくれたのは、他でのほかでもない地域の人たちでした。

3人目の協力隊であった池田まゆさんが、「新しい交流の場としてドッグランを作りたい」と提案をした時も、行政であれば予算を出して議会に通して……と、実現に1年ほど有するところ、町の人たちが率先してチームをつくり、3ヶ月ほどで実現したそうです。

こうした民間の理解と協力があるということが、朝日町の大きな強み。目的を持って「こういう挑戦をしたい!」と手を挙げれば、幅広いジャンルで実現できる受け皿があります。

今後は特に、自分のスキルを地域課題解決に活かせる人、伝統文化の継承に意欲のある人を積極的に呼び込んでいきたいそうです。

自分も移住者だからこそ、協力隊の気持ちがわかる
━━『HYGGE』オーナー 直井直子さん

つづいて、町の人々に地域おこし協力隊との関係について、実際にお話を伺ってみることにしました。最初に取材を受けてくださったのは、朝日町でハーブティーの喫茶店『HYGGE(ヒュッゲ)』を営んでいる、直井直子さん。

「私自身も東京からの移住者なので、最初はやってみたいことがあっても、誰にどんなふうに相談したらいいか全然わからなかったんですよね。友達もいなかったし、当時は協力隊の制度がなかったので同じ状況の人も少なくて。
協力隊の皆さんにとっても、最初の壁は『誰に何を頼めばいいかわからない』ってことじゃないかな。そういう時にはなるべく声をかけて、同じ仲間として力になりたいと思っています」

協力隊との関係性も手探りではあったけれど、ふらっと「HYGGE」に来てくれた時に話をするようになって、このお店が交流の場所になったと言う直井さん。
 

最近では、猫好きの服部彩子隊員から「猫のイベントを開いてみたい」と相談を受け、「いいねこ朝日写真展」というイベントのお手伝いをしたそうです。

Instagramで「#いいねこ朝日」のタグをつけて投稿してくれた人の中から、グランプリを決めるというコンテスト形式のイベントです。
グランプリに選ばれた方には、直井さんが猫の気ままな性格をイメージしてブレンドした、ハーブティーが贈られることに。

「私が移住してきた当時は同世代の移住者も全然いなかったので、仲間が増えて嬉しいです」と直井さん。最後に、「3年の任期を自分なりに楽しく、それぞれの未来に繋がるように過ごして欲しいな」と思いを語ってくれました。

「育てたい」という思いが、自分たちの活力に繋がる━━泊漁業協同組合長 脇山正美さん

地域おこし協力隊の仕事内容は多岐に渡り、人数も17名と増えたことで、町の人たちによく名前を知られている人と、そうでない人とで差が生まれ始めてしまう、という現状もあります。

イベント企画や広報の仕事であれば、地域の人との交流も多いですが、林業や漁業など専門的なスキルを身に付けるために活動している協力隊員は、どんな変化を町にもたらしているのでしょうか? 泊漁業協同組合長 脇山正美さんにお話を伺いました。

「私は普段、徳田聖一郎隊員と玉生佑介隊員に、刺し網漁(カニ・ヒラメ・サケなど)や、ホタルイカなどの燻製加工方法などを教えています。

最初から漁業を学ぶことを目的として来てくれているので、彼らは非常に意欲的ですし、何よりも自分たちが毎日してきたことを『楽しい』と言って取り組んでくれるのは嬉しいですね。

元気な若手がこの仕事を『かっこいい』と言ってくれるのは、我々にとっても活力になっています。うちの組合は、積極的に新しい担い手を育てていく方針なので、経験がなくても、地元の人じゃなくても、意欲がある人は快く受け入れているんですよ」

左:徳田隊員 中央:玉生隊員

漁業に協力隊を受け入れたのは、今回が初めてだったそう。一次産業は体力的にも決して楽な仕事とは言えないので、最初は心配もあったそうですが、「今では組合の新しい原動力になってくれた二人に感謝している」と脇山さん。

漁業という仕事柄、広くたくさんの町民に存在を知ってもらうことは難しくはありますが、どっぷりひとつのことに専念して取り組むことで、深い絆が生まれていることを知りました。

「報告会を開き、もっと町の人たちに協力隊のことを知ってもらおう」という先輩隊員の思いを繋いで

朝日町では、年に1回「地域おこし協力隊活動報告会」を行なっています。この報告会は、行政が決めたものではなく、去年卒業した先輩隊員が「自分たちの活動をもっと理解してもらうために」と、自ら企画したものだそうです。

その思いを今年の隊員たちが繋ぎ、3月2日に2回目の報告会が行われました。

隊員たちは一人ひとり、この一年間でしてきたことと、次の一年で挑戦したいことをパワーポイントにまとめ、発表をしていきます。

総勢70名近くの町の人たちが集まり、メモを取ったり、質問をしながら熱心に報告を聞いていました。

隣の席に座っていたおばあちゃんに少し話を聞いてみたところ、「家の近くに住んでいる隊員のことしかよく知らなかったから、いろんな人がいろんな分野で活躍してくれているんだなぁと実感しますね」というコメントが。

17名の協力隊がいるということ自体は、新聞や回覧板、テレビでもよく紹介されているので知っているものの、具体的に何をしているかまでは把握しきるのが難しい。だからこそ報告会という場所は、お互いの心の距離を縮めるために、重要な時間になっていました。

2時間に及ぶ活動報告会が終わった後は、地元の食材を使った料理を楽しむ懇親会も。

笹原町長も駆けつけ、協力隊と町民の皆さんに一年間の感謝を伝えた後に、「これからも頑張っていきましょう!」と元気に乾杯の音頭を取ってくださいました。

美味しいお酒と料理でお腹を満たしながら、隊員たちと町の人々の交流を楽しみます。面と向かって、「頑張ってくれてありがとうね」と地域の方々から言葉をもらえることは、活動の原動力にもつながりますよね。「自分の毎日が、誰の笑顔に繋がっているのか」を実感できる、隊員たちにとっても貴重な時間になっていました。

せっかくなので、報告会・懇親会にお子さんと参加されていたお母さんに、お話を聞いてみることに。

「朝日町観光協会で活動している浦部竣一隊員が、ブレイクダンス教室を開いていて、うちの子たちも教室に通っているんですよ〜。各々の活動の他に、個人の特技を生かして新しいコミュニティをつくってもらえることは、すごく刺激になりますし、子どもの可能性も広がると思います。
地域おこし協力隊の皆さんは、新しい発想とエネルギーを持っていろいろな挑戦をしてくださっているので、町がどんどん明るくなっていくのを感じています」

親睦会の様子を見て、協力隊を受け入れる町の皆さんの温かさを肌で感じることができました。一番最初に笹原町長もおっしゃっていましたが、朝日町で活動する最大のメリットは「受け皿が大きいこと」。活躍の場が幅広く、前例のないことであっても、民間のサポートがとても手厚いことです。

町と協力隊の理想の関係性が、あなたの可能性を最大限に広げてくれる

地域おこし協力隊として、「こんなことを実現したい!」「こんな挑戦をしてみたい!」という意欲を持っている人であれば、富山県・朝日町は、自分の可能性を最大限に広げられる環境が整っていると思います。

町民と地域おこし協力隊と行政が、お互いに頼りっぱなしの関係ではなく、同じ目線で、仲間として切磋琢磨できる。まさに、理想の関係作りを実現している町でした。

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