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2018-10-25
<真鶴レポート後編>移住者が活躍する真鶴の秘密とは? 真鶴未来塾「コミュニティリーダー養成講座」に潜入

前編では真鶴という町が持つ魅力や、地元で人気の飲食店「ピザ食堂KENNY」の紹介と移住されたご夫婦のお話をご紹介していきました。
今回は移住してきた方々が新しいことを始められる環境が揃うという真鶴の魅力を深掘りすべく、2018年9月17日に開催されたイベント・真鶴未来塾「コミュニティリーダー養成講座」に参加。
こちらのイベントの様子をご紹介するとともに、移住者促進の影の立役者でもある真鶴出版を訪ねてみましたのでご紹介します。
真鶴の未来を考えるコミュニティリーダーとは?
イベント会場となる「コミュニティ真鶴」は、まちづくり条例「美の基準」に基づき建設されたとあって、私たちが一般的に想像する“公共施設”とは少し違うかもしれません。
2016年から一般社団法人真鶴未来塾が運営しているこの施設、普段は開かれた場として、地域の住民が自由に交流したり催しものを開いたりするスペースなのです。
風情のある木製の看板をくぐると石造りの階段。そして上がった先にイベントスペースとなる会議室が見えてきます。
迎えてくれたのは、真鶴未来塾の代表理事でもある奥津秀隆さん。入口で名前を書いた名札を下げて、席につきます。
イベントテーマは「コミュニティリーダー養成講座」。「地域のリーダーを育てる?」「それって町内会や自治会のようなもの?」そう思った方も多いのではないでしょうか。
地域における課題を解決するのに必要なことって?
最初に4人1組になって自己紹介。15名ほどの参加者は、真鶴に住んでいる方のみならず小田原や熱海などの近郊、そして都内や千葉県など関東全域から来られていて、注目度の高さがうかがえます。
講師は、Lean Startup Japan LLC代表社員の和波俊久氏。
和波氏は過去に2度の起業経験があり、ネイティブ講師の英会話家庭教師事業や集合自宅向けブロードバンド施設事業など職種もさまざま。その経験をもとにして、現在は「プロセスコンサルタント」として起業家の育成やスタートアップ支援などを行っています。
地域の課題解決にも取り組んでおり、以前より真鶴のイベントで講師を務めているほか、沖縄や島根などの地域でも活動されています。
まずは、大前提としてまちづくりにおいて頭に入れておかなくてはならないことを和波氏にお話いただきました。
イノベーターを見つけて地域で活躍する人材として育てるには、まずはイノベーターを指導し、支援する人のレベルを向上させることが必要だそう。それこそが、まさに「コミュニティリーダーの養成」にあたると言います。
イノベーションにつながる行動を起こすためには、リーダーたちを中心に「同じ方向性(=ベクトル)、同じビジョンで力を結集しリレーしていくこと」「『トライ&エラー』を循環させ、結果ではなく挑戦自体が賞賛される環境」を全員で共有しあい、長いスパンで物事を見ていく必要があるようです。
ソーシャルデザインで新しい未来を創る
さて、「地方はどう創生すべきか?」「地域がどうあるかは誰が決めるべきか?」という問いにはどう答えるのが正解なのでしょうか?
地域の課題もそこに住んでいる人も、そのときどきによって変わっていくものです。これに対する和波氏のより良い解決策は、「いまその地域にいる人たちで、前とは異なる新しい未来を作ること」だと言います。
そしてそのための方法として、「ソーシャルデザイン」が話題に上がりました。
――“良いデザイン”とは、利用する人たちのとまどいがなく、シンプルで分かりやすいもの。その存在をだれも知らないけれど、完全に機能している状態。
使いやすいサービス、だれにでも理解できる仕組みづくり、これがソーシャルデザインの基本です。ソーシャルデザインは団体競技。
最初から「誰と組もう」と選ぶのではなく、「何人」同じ船に乗せられるか。より多くの人が集結することで、集まった人たちが地域の課題を発見し、解決に向けて同じ目標を目指せるのだと和波氏は言います。その船に乗せることがコミュニティリーダーとしての大切な役割でもあります。
今回イベントに参加し、コミュニティ作りは目指す方向を決めたあとの持続可能なシステムづくり、プロセスを評価できる組織作りが大切だと実感したのでした。
コミュニティリーダーになるために
この11月からは、より実践的な内容のプログラム「Lean Startupコミュニティ養成プログラム第二弾」が始まります。
「真鶴に眠るキーパーソンや専門的知識を持った人材を掘り起こし、“ソーシャルマップ”を作成してみよう!」という内容で、これから地域で活動していきたい人やすでに活動している人、コミュニティを作りたい人、など真鶴在住の方以外も参加可能です。
時間:各回13時~17時 ※両日ともご参加できる方を優先
会場:コミュニティ真鶴
参加費:無料
主催:真鶴創業支援事業実施部会
後援:真鶴町
参加費も無料とのことなので、ぜひ興味を持った方は問い合わせてみてくださいね。
一般社団法人 真鶴未来塾
TEL/FAX:0465-68-0789 Mail:info@manazurumirai.jp
「泊まれる出版社」真鶴出版の挑戦
取材日に真鶴で行われていたイベントは、これだけではありません。最後にご紹介するのは、「真鶴出版」という出版社が開催したイベント「旅と音楽食堂」です。
二部構成のこのイベント。私が参加できなかった前半は、2015年に真鶴出版を立ち上げた川口瞬さんによる真鶴街歩き。そして後半は、真鶴出版二号店で真鶴の食材を使ったディナーをいただきながら、国内外問わず、旅しながら音楽活動をされている樽木栄一郎さんのライブを楽しむというもの。
「泊まれる出版社」がある、と知ったとき私は“宿泊”と“出版”がどうしても結びつきませんでしたが、イベントに参加しているうちに、訪れる場所や出会う人々、何かを体験すること自体が一つのコンテンツであり、宿泊をしてその町に滞在するというのは「何をどう楽しむか」を編集する作業に限りなく近いんじゃないかな、と思えてきました。
ケータリングは、料理人のせきぐちたくやさんが主宰する「球体食堂」によるもの。真鶴港にある干物屋高橋水産さんの塩ウズワで作った特製の餡をカボチャにかけた料理をはじめ、一品一品が創意工夫にあふれたものでした。
それ以外にもごはんに合うおかずが並び、地域限定のクラフトチューハイ「小田原レモン」を片手にいよいよ樽木栄一郎さんのライブが始まりました。
時折旅先でのエピソードを挟みながら奏でるギターと歌は、私たちに優しく寄り添いながらも熱さが感じられる音楽。美味しい食事と、真鶴出版の居心地よい空間、心地よい音楽に揺られながら真鶴の夜を満喫したのでした。
全2回にわたってお届けした、真鶴の取り組み。今回ご紹介したピザ食堂KENNYや真鶴出版の他にも、ここ数年で真鶴に移住して新しいことを始める人たちが増えているそう。同じような志をもった人々が身近にいることは刺激にもなります。
“新しいもの”を受け入れる環境が根付き、その輪が徐々に広がっていっていること。そして、真鶴未来塾をはじめ、真鶴町商工会や地元の信用金庫など町全体でスタートアップを支援する仕組みがあること。
今回の講座には、「自分だったらどんなことができるかな?」とライフデザインを見つめ直したり、地域で生きること、働くことを考えたりするヒントが転がっていました。
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真鶴街は、創業支援事業者と連携して創業者を支援する「真鶴町創業支援事業計画」を策定しています。証明書の交付を受けた起業家が、創業に関する各制度において特例を受けられる制度です。
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