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<特集>ラボたま×SAGOJOプロジェクト

2023-12-08

「誰もがチャレンジできる場所に」建築家らが埼玉県 寄居町の共創型ローカルプロジェクトセンター『rutsubo』で、シェアキッチンを始めたワケ

埼玉県北西部に位置し、都心部から70km圏内にある「寄居町(よりいまち)」

人口約3万人ほどののどかな町で、荒川の清流が秩父の山間から関東平野に流れ出す扇状地のように発展したため、清らかな水と緑に恵まれています。

寄居町には景勝地や史跡なども多く、中でも代表的なのは「鉢形城(はちがたじょう)」。戦国時代の代表的な城郭跡として、日本100名城のひとつに数えられています。

鉢形城

また、寄居町は「一年中桜に出会える町」としても有名で、約100種を超える桜が一年を通して咲き誇っています。

鉢形城公園内にある町の天然記念物「鉢形城の桜」

そんな寄居町では、多様化するニーズに合った住まいづくりを実現するために、空き家の調査や移住・定住、シティプロモーションなどに積極的に取り組んでいます。

地域の困りごとを解決していく「地域デザインラボさいたま」

「地域デザインラボさいたま」は、埼玉りそな銀行の100%子会社として、2021年10月に設立されました。銀行では対応できない地域の「困りごと」を解決するために、行政・民間企業・大学等と連携しながら、埼玉県全域で地域課題解決に向けた事業を行っています。

その中で、全国的に課題となっている「空き家問題」の解決に向けた取り組みがあります。寄居町にて、SAGOJOの “旅人” が空き家リノベ物件に宿泊し、空き家の新たな利活用モデルとして「観光+新たな働き方」を発信していきます。

同時に、地域のまちおこしプレイヤーたちと連携し、移住・定住や観光に加えて空き家の利活用に関する啓発を行っていきます。

※この取組みは国土交通省の令和5年度「空き家対策モデル事業」に採択されています

地域デザインラボさいたまの事業モデル

その第1弾として、実際に寄居町で空き家をリノベーションし、地域で活躍するキーマンにインタビューを実施。まずは、寄居駅近くの空き家でシェアキッチン『rutsubo(ルツボ)』を運営する、根岸さんと尾形さんのお二人に話を伺いました。

お話を聞いた人


根岸 龍介さん
一級建築士。根岸龍介デザイン事務所主宰。つばめ舎建築設計共同代表。寄居町では「泊まれるオーガニックレストランmujaqui」や「寄居町商工会新拠点(仮称)」等の設計に携わる。2021年より寄居町に拠点を構えて都内との二拠点生活を始め、尾形慎哉・加藤隆哉とともに「共創型ローカルプロジェクトセンターrutsubo」を開始。本業の建築設計の他に、寄居町ではシェアキッチンの運営やローカルプロジェクトの企画運営を実践中。

尾形 慎哉さん
株式会社グラグリッド専務取締役/プロジェクトファシリテーター。大学で工業意匠を学び、卒業後、都内のデザイン会社でユーザビリティ評価やUI設計を担当。2011年11月にグラグリッドを設立し、サービスデザイン事業を展開。地域づくりや観光、新規事業開発や組織変革などをテーマに共創プロジェクトを実践。2017年から2019年までは福島県の浪江町役場職員として勤務。現在は「共創型ローカルプロジェクトセンターrutsubo」でローカルプロジェクトの企画運営、実験スナックrutsuboでの社会実験に取り組んでいる。

築50年越えのレトロ物件を借りることになった経緯

ーーまずはお二人が初めて寄居町に訪れた理由を教えてください。

根岸:以前、僕が新潟県へ出張に行った際、たまたま宿泊していたゲストハウスで寄居町の商工会事務局長の方と一緒になり、朝食の席で声をかけていただきました。そこで寄居での町おこしについて話を聞いているうちに、段々と興味が湧いてきて、その翌月に町を案内してもらうことになりました。

その後、何度か寄居町を訪れた際に仕事仲間の尾形さんを誘って、寄居で開催されたワインイベントに行きました。その時に「ここに拠点があれば面白そうだよね」と話していると、そばに条件の良さそうな空き家があって。ついつい酔った勢いで「ここ、借りられませんかね?」と言うと、そこに地元の方がいて、トントン拍子で話しが決まったんです。

尾形:僕たちは東京に事務所があるのですが、都内から寄居町までは車もしくは電車でも2時間ほどなので、比較的アクセスが良くて。ワーケーションの地として考えるとちょうどよい場所だったんです。せっかくなら二人で場所を借りたほうが面白そうだったので、「寄居に拠点が図らずもできちゃった」というのが正しいかもしれませんね。

ーーどんな空き家を借りたのでしょうか?

根岸:駅近くにある築50年以上の昭和レトロな物件です。昔のタバコ家の看板がそのまま残っていて、二人とも見た瞬間にすごく気に入ったんです。僕は本業が設計士ということもあり、空き家の間取りは自分たちで考えることに。初期の段階から人が集まりたくなるような空間にしたくて、フルオープンキッチンを考えていました。昭和の懐かしい雰囲気を残しつつ、今風にリノベーションすることに決めました。

rutsuboの設計図(rutsubo HP より)

ーーリノベーションで特に大変だった点はありますか?

根岸:壁を解体する時にブルーシートをくくりつけて壁代わりにするんですが、猫が入ってきてしまい、塗ったばかりのコンクリートに猫の足跡がついてしまったんです。だから猫に舐められたことかな(笑)

尾形:リノベは想像以上に大変だったのですが、荷物の整理や庭仕事など自分でできるところはして、専門的な知識を要する設備系は地元の大工さんにお願いしました。そうすることで、仕事をしながら家づくりに集中することができました。それに週1で作業のために寄居に通い、汗をかいたあと温泉に入って東京に帰るという生活を半年間続けたことで、気分転換と達成感を味わうことができました。

リノベーション中の様子

地域の未来を一緒に考える人が出会う場を作りたかった

ーーどうして寄居町でシェアキッチンを作ることになったのでしょうか?

根岸:寄居は飲食店が多いんですが、複数の料理人が共同使用する場所はこれまでになくて。そのため、お試しで飲食店をやってみたいという人に向けて、新しく場所を作りたかったんです。だけど何より「地域の未来を一緒に考える人が出会う場があれば、この街でより大きなめぐりが生まれるのではないか」と思ったんですよね。

ーー現在、rutsuboではどのような活動が行われているのですか?

根岸:毎週金曜日の夜にみんなでご飯を食べながら新しい企画や困りごとについて話し合う「つぼめし」を行っています。他にも、日替わりカフェや料理教室なども行っています。

尾形:僕はrutsuboと連携して、毎週土曜日のみオープンする『実験スナックrutsubo』をやっています。たまたま個人で借りた物件が元スナックで、内装や設備がそのまま残っていたので「せっかくならスナックも活用しよう!」と思ったんです。

スナックのカウンターに立つ人は毎回変わる仕組みになっていて、ママやマスターをやったことはないけど、実はやってみたかったという人や、話したいテーマがある人が気軽に体験できるようになっています。お店を開くと地元の人も来てくれることがあって、移住者と地元の方との交流が生まれています。

尾形さんのスナックで週1ママが働いている様子

ーー「やりたい!」と思ったことを自由にできるのが寄居町の魅力なんですね。

根岸:そうですね。寄居は映画館のような娯楽施設がないからこそ、お祭りに本気で向き合ったり、河原でバーベキューをしたりと「自発的に遊ぶことが上手い人」が多い気がします。やっぱり歴史的にも人が集まってくる地域柄なのか、外から来た人に寛容な人が多いのかもしれません。それに、寄居にはまだキーパーソンがいなくて。だからこそチャンスが多く、外から来た僕たちのいろんな意見も取り入れてくれるんだと思います。

都会だと埋もれてしまうことでも、寄居町では反響が大きい

ーー改めて、それぞれが思う寄居町の魅力って何でしょう?

根岸:やっぱり東京や埼玉に遊びに行きやすい立地ですかね。それこそ今、熊谷や秩父などの埼玉県北部に面白いお店が多いんですけど、そこにも日帰りで行ける距離なので、いろんな店舗をはしごで回ることができます。また、僕は散歩が好きなんですが、鉢形城の奥のエリアを進むとイタリアの田舎みたいな風景が広がっていて驚きました。寄居には一般的にはあまり知られてない素敵な場所も多くて、それもいいんですよね。


根岸さんの散歩コース

尾形:寄居の人たちって外から来た人を受け入れる「包容力」があるので、何かやればすごく関心を持ってくれるんですよ。一見関心のなさそうな人も名前を知ってくれていて、「日頃から人のことをよく見ているんだな〜」と思います。それに都会では埋もれてしまうようなことでも、ここでは反響が大きくて、みんながそれを頼りにしてくれます。いい意味でも目立ちやすい地域だからこそ、本気で商売をしたい人には向いていると思いますね。

ーー最後に、これから寄居町に移住を検討されている方に一言お願いします!

尾形:やっぱり実際に来て空気を吸って、肌で感じてみなきゃ分からないことってたくさんあるので、まずは寄居に来てみてください。​​せっかく来るのなら、カヌー体験やスナックなど楽しみながら町の人々と交流してみてほしいです。

根岸:寄居はレトロな街並みが好きな人や何か事業を始めたい人にはピッタリな場所だと思います。僕でよければ建物に関する悩みを聞く相手にもなるので、気軽にrutsuboやつぼめしに寄ってみてくださいね。

▷ rutsubo HP

ライター:SAGOJO編集部

『すごい旅研究所』の記事制作を手がける編集チーム。「旅 × シゴト」を目指すすべての旅人に役立つ情報をお届けします。

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