すごい旅の話
2023-08-18
あなたの「また行きたい場所」はどこですか?福島県 飯舘村で感じた新しい風

唐突ですが、質問です。
あなたには「また行きたいな」と思う場所がありますか?
あるなら、それはどんな場所ですか?
また行きたいと思える場所があるのは、素敵なことですよね。
実はもう1年程前になりますが、その日筆者が訪れたのは、福島県の飯舘村(いいたてむら)。地域の人が優しいというのは、日本各地でよく聞く話ですが、ここで受けた印象はそれだけでなく「人の温かさが感じられて嬉しい」というものでした。その結果、1泊2日という短い滞在ながら、筆者にとっての「また行きたい」場所になったので、今回はその魅力をご紹介したいと思います。
新しい風が吹いている「飯舘村」ってどんな場所?
飯舘村(いいたてむら)に行ったことはなくても、名前を聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。というのも、飯舘村は東日本大震災の際に全村避難になった土地です。2017年には避難指示が解除され、やっと村に戻ることが可能となりましたが、2022年当時においても震災前と比べて住人は4分の1程度の1500人ほどに留まっていました。
そんな飯舘村に、いま新しい風が吹き始めています。なんと住民の内の約150人が移住者で、地域のイベントを開催したり、キャンドル作家として活動したりと、もともと地域に住んでいた人たちと協力しながら、さまざまな挑戦が生まれているのです。
参加したのは「自分らしい暮らしの道しるべ」を探す旅
そんな飯舘村で筆者が参加したのは、「ミチシル旅」と名付けられた移住検討者向けモニターツアー。2022年は全3回開催されたのですが、今年2023年は「はじめてのミチシル旅」全3回と「つながるミチシル旅」全3回、2つのシリーズで合わせて全6回開催。どれも飯舘村の良さを体感できる内容となっています。(2023年最新のミチシル旅はこのページの最下部をご覧ください)
「ミチシル旅」は毎回テーマがあるのですが、筆者が参加した2022年第2弾は「農ある暮らし」がメインテーマでした。当日のアテンドを含めツアーを先導してくれるのは、福島市に拠点を置くデザイン会社「SAGA DESIGN SEEDS」のお二人。
「ミチシル旅」というのも、聞きなれない言葉でしょう。ツアーは移住を最終的な目標としたものであるものの、よりライトに飯舘村を知ってもらいたいと考えて作られたものでした。飯舘村を訪れてその自然や体験、そして人と、さまざまな魅力に触れる中で、「自分らしさの道しるべを探ってほしい」という想いが名前に込められています。
「農ある暮らし」をテーマに村の人たちと交流
その回のテーマは「農ある暮らし」。初日のスケジュールは、農園の訪問や畜産農家さんを交えてのバーベキューと、地元の人たちの生の声を聞きながら飯舘村の「農」の部分を知ることができる内容となっていました。
まずは、震災後に立ち上げられた「いいたて結い農園」へ。雨が降ってきたため、予定されていた農作業こそできなかったものの、農園で育てたホーリーバジルを使ったバームづくり体験は、なかなか他ではできない内容で参加者も大満足。作業をしながら地元の年配の方々と話ができたのも、良い時間となりました。
その際に強く感じたのは、村の人たちの前向きさ。正直、名前を聞いたことがある程度でしか飯舘村のことを知らず、訪問前は「震災関連で大変だった場所」というくらいのイメージしかありませんでした。もちろん実際に大変だったこともたくさんあったに違いありません。それでもお話を聞く中で出てくる話題は、いま向き合ってる課題や、村の未来のことがほとんど。持続可能な土地にしていくために必要なことを、一人ひとりが考えていることが伝わってきました。
もちろんそれは特定の世代に限った話ではありません。震災のタイミングで避難し、京都のお肉屋さんで修行して飯舘村に帰ってきた山田さんの家は、牛を育てる畜産農家。現在は、震災前には高い評価を得ていた「飯舘牛」ブランドを復活させるにはどうするべきかを考えながら、毎日牛たちと向き合って仕事をしています。
初日の夕食はそんな山田さんがその場で捌いたお肉をいただく贅沢なバーベキュー。地元の方や、すでに移住された方と交流しながらの食事となり、さまざまなお話を聞かせてもらいました。
包丁職人として村に工房を構えた方、ものづくりイベント「山の向こうから」を開催して2日間で約2000人もの来場者を呼べる企画にした方、村の美しい花を使ったキャンドルを作る作家の方。多種多様な形で村と関わり、それぞれの得意な形で盛り上げています。話を聞いていると興味深い活動が盛り沢山で、次にこの村に遊びに来た時には、何が起こっているだろう?と再訪が楽しみになりました。
また、滞在初日にして強く体感できたのは、飯舘村の食材が美味しく豊かなこと。山田さんが捌いてくれた牛肉はもちろん、お昼にいただいた軽食もとても美味しいものでした。村の特産品であるもち米を使ったおこわも優しい味で、あっという間に完食。さらに衝撃的だったのは、かぼちゃの甘さです。「雪っ娘」という名前でブランドになっているくらい甘いかぼちゃも、特産品の一つ。知らずに食べた時は、一瞬サツマイモかな?と思えるほどでした。
泊まった場所も素敵だったので、ご紹介しておきましょう。この日宿泊したのは、緑溢れる中にあるかわいらしいコテージでした。他にもキャンプサイトや大浴場などが揃う、「村民の森 あいの沢」という施設内にあります。
さらに夜には嬉しいサプライズも。昼の天気から考えるとさすがに星は見えないかなと半分諦めていましたが、暗くなってから何気なく空を眺めてみると、満点の星が!思わずカメラを取り出し撮影しました。
移住された方の中に、村の好きなところを「空が近いこと」と言われていた方がいましたが、まさにそれを実感できた瞬間でした。
清々しい秋晴れの下、二日目がスタート!
星が見えたことから期待していた二日目の天気は、快晴!朝食と自然散策から一日がスタートしました。
自然散策をガイドしてくれるのは、福島県認定の森の案内人、高野さん。朝食では、竹を使ってのお箸・箸置き・コップを全員分手作りで準備してくれており、そのおもてなしの精神には脱帽です。
「村民の村 あいの沢」は、宿泊関連施設が充実しているだけでなく、ため池がありアカマツや白樺など多様な植物が生育していて、散策に最適な自然空間でもあるのです。朝の最低気温は15℃くらいと、秋を感じさせる涼しい飯舘村でしたが、何気ない自然がとても力強く、歩くだけでリフレッシュできました。
その後も飯舘村の豊かな自然環境を知ることができる場所へ。まず向かったのは、バーベキューで自ら牛を捌いてくれた山田さんの牧場。青空の下、ゆったりと過ごしている牛たちの姿に癒されました。
さらに、「いいたて村の道の駅までい館」では、震災前から花卉(かき)栽培で有名な飯舘村の花の美しさを知ることができました。施設内の装飾やリーズナブルで美しい花束の販売、道路を挟んだところでは耕作放棄地を利用した花畑も。
なお、道の駅の名前にも使われている「までい」というのは、東北の言葉で「手間暇を惜しまない」「丁寧に」「真心を込めて」といった意味を持ちます。村の精神性とマッチしていることもあり、飯舘流のスローライフのことを「までいライフ」ということもあるそう。
自然を堪能したあと、最後は「La Kasse(ラ カッセ)」にてランチタイム。2022年6月にオープンしたばかりですが、昨年お伺いした際には、すでに人気で入れないこともあるとのことでした。食べるとその理由がすぐわかるほど、どの料理も本当に美味しい!
実はこのランチメニューは、シェフがミチシル旅の参加者のためだけに考えた特別メニュー。ホーリーバジルを使ってみるチャレンジもしながら、ほとんどの食材を飯舘産のもので用意してくれたとシェフご自身から説明してくださいました。
「名前を聞いたことがある」から「また行きたい」へ
長いようで短く濃かった旅もここで終了です。
2日間の滞在を紹介してきましたが、「飯舘村の良さ=人の温かさ」を随所で感じるツアーになっていました。もともと村に住んでいた人たちだけではなく、移住されてきた方々やツアー運営スタッフの方も含め、みんな「飯舘村が好き」だということが伝わってきたのが、とても印象的でした。
振り返ってみれば、竹の食器を用意してくれたのも、ミチシル旅用の特別メニューを考えてくれたのも、沿道に美しい花が多く咲いているのも、村の人たちが来村する人を楽しませようとしたものばかり。私が気づかなかっただけで、他にもあったのだろうと思います。
飯舘村は、そんないろいろな人の想いに自然と触れられる場所でした。そういえば、初日の夕食の途中には、地元の方がおはぎや野菜を差し入れに持ってきてくれるシーンも。ツヤツヤで甘いミニトマトも、私の中で忘れられない飯舘村の記憶となりました。
ツアーが終わってから自然と頭に浮かんできたのが「また行きたいな」ということ。そして、「いろんな人に行ってほしい」ということ。
花や星、牛などの豊かな自然、新しく吹く風、そして温かい人たち、と紹介してきましたが、どれか一つでも気になったらぜひ一度飯舘村へ遊びに行ってみてくださいね。
福島県 飯舘村を舞台にした人気の『ミチシル旅』、最新の募集がスタート!
現在は、2つのテーマで参加者を募集中!
ひとつめのテーマは「地域をつなぐなりわいの輪に入るー大久保・外内地区と農業」です。地域でつながる「結い」の農業を守り続けている「大久保・外内地区」の方々と深い交流を行います。地域に入り込み、この土地での暮らしを体感することで「自分自身の道しるべ」を探す旅に参加しませんか?
開催日は「10月14日(土)〜15日(日)」の1泊2日。ツアーを楽しみつつ、最後にアンケートであなたの意見を聞かせてください!
<リターン>
参加費無料(現地滞在費・村内移動費含む)
※締切:9月30日(土)23:59 定員に達し次第早期終了の可能性があります
ふたつめのテーマは「丁寧にゆったりと。飯舘村の子育て暮らし」です。高原の爽やかな自然あふれる環境で、子育てしながら村で暮らしている方々との触れ合いを通じて、「自分らしい暮らし」を叶える具体策を探っていきます。
開催日は「10月28日(土)〜29日(日)」の1泊2日。ツアーを楽しみつつ、最後にアンケートであなたの意見を聞かせてください!
<リターン>
参加費無料(現地滞在費・村内移動費含む)
※締切:10月14日(土)23:59 定員に達し次第早期終了の可能性があります