ホーム > すごい旅研究所 > ど素人が大赤字リゾートホテルを建て直す、SNSを駆使した前代未聞のプロジェクト|片岡 力也

すごい人生

2022-06-14

ど素人が大赤字リゾートホテルを建て直す、SNSを駆使した前代未聞のプロジェクト|片岡 力也

ハネムーンで世界一周中、西アフリカにある島国・カーボベルデのオリンピック公式アンバサダーになり、世界中のメディアから注目を浴びた「すごい旅人」であり映像クリエイターの片岡 力也(かたおか りきや)さん。

帰国後も「旅 × シゴト」を実践しながら、現在はSNSを使って沖縄の赤字化したホテルを建て直す『ど素人ホテル再建計画』に挑戦中です。

未経験ながらホテル再建に携わることになった経緯、SNSを駆使したプロジェクトのポイントや今後の展望など、片岡さんの活動を追ってみました。

場所にとらわれない働き方を目指す

カーボベルデ首相との一枚。日本人がビザなしでカーボベルデに滞在できるよう交渉をおこなった

——前回はカーボベルデのお話を伺いましたが、今回は片岡さんの新たな活動を追っていきたいと思います。改めてこれまでの経歴を教えてください。

僕は高校までサッカー中心の人生を送ってきたのですが、旅人だった祖父の影響を受けて、大学ではたくさんの国や地域を旅しながらさまざまな価値観に触れてきました。卒業後は海外営業部がある大手メーカーに勤めたものの希望部署に配属されず、約1年で会社を辞めました。

そこから場所にとらわれない働き方をしたいと思うようになり、都内で旅人専用のシェアハウスを経営したり、SAGOJOを利用したりと「旅 ×シゴト」を実践してきました。動画制作を始めたのも、自分がコンテンツになれば場所にとらわれない働き方ができると思ったからです。

シェアハウスメンバーと旅行に行った際の写真

——これまではどんな旅をしてきたんですか?

秘境をテーマにあまり知名度がない国を旅したり、『クレイジーハネムーン』と題して世界3周目の旅に出かけたりしていました。ハネムーンではコロナ禍に巻き込まれ、1年3ヶ月ほど島国のカーボベルデに閉じ込められてしまって......。

幸いにも動画の仕事をしていたことがきっかけでホテルやレストランのPV制作を行い、現地での滞在費を浮かせながら生活することができました。

▷カーボベルデ滞在の様子はこちらのインタビュー記事からご覧いただけます。

SNSを使った前代未聞のプロジェクト『ど素人ホテル再建計画』が始まった経緯

カーボベルデ滞在中の写真

——帰国後はどんな活動をされていましたか?

当時メディアやテレビ出演の影響で「日本に帰ってきたら撮影をしてほしい」という依頼が多くて、日本各地を訪れながら飲食店や大手アパレル会社などのPV制作をしていました。そのなかで、今取り組んでいる『ど素人ホテル再建計画』のお話もいただいたんです。

——『ど素人ホテル再建計画』はどのような取り組みですか?

ホテル経営ど素人の僕がSNSを駆使して視聴者のアドバイスや意見をフル活用し、窮地に立った沖縄の大赤字リゾートホテルを再建させる取り組みです。ホテル名、部屋のコンセプト、従業員の募集など、ホテルに関するすべてのことを視聴者の皆さんと一緒に創り上げる前代未聞のプロジェクトだと思います。

▷「ど素人ホテル再建計画」SNSはこちら(YouTubeInstagramTikTokTwitter

——まさに前代未聞! ホテル経営未経験の片岡さんに依頼があった背景が気になります。

カーボベルデ滞在中にホテルのPVをたくさん作っていたのですが、それをきっかけにオーナーさんが僕のことを知ってくれて。

全然知らない場所で1から人脈を作ったり、日本でカーボベルデの知名度アップに貢献したりという諦めずにコツコツ挑戦する姿を見て、「片岡さんだったら認知度や売上が上がっていないうちのホテルにこれまでの経験を活かしてくれるだろうし、再建をお任せできる」と思って声を掛けてくれたそうです。

——カーボベルデでの経験が実を結んだと。

そうですね。僕はコロナで足止めをくらったときも前向きにとらえて、逆境をどう味方につけるかを考えていました。『コロナの世界を照らす50のやさしい物語』という本でも特集されたのですが、今まで意識していたことや頑張りを評価されたのは嬉しかったですね。

——ほかの企業からも依頼があったと思いますが、このプロジェクトをやろうと思った決め手は何かありましたか?

僕が大切にしている、場所にとらわれない働き方ができることと、これまで経験したことのない分野に挑戦できるのが面白そうだったのでやってみたいと思いました。カーボベルデでは動画とSNSを駆使して、どうすればバズるか、どうやったら賛同を得られるかを勉強できたので、SNSを使ったホテル再建には自信があって。

僕に頼んでいる時点でかなりクレイジーなオーナーではあるんですけど、自分の裁量権も大きく、信頼を置いてくれていることも決め手になったポイントですね。

初めてホテルに訪れた瞬間、黒字化のビジョンが見えた

沖縄県恩納村にあるリゾートホテル。オレンジ色の屋根が特徴的です

——リゾートホテルはどのような現状ですか?

コロナ前でも稼働率が15%まで下がり、客室の料金も低下しています。コロナ禍でさらに状況が悪化して従業員も2人まで減ってしまい、ホテルの管理が難しくなるという悪循環が続いていました。状況としてはマイナス面も多い一方で、ポテンシャルは高いと思っています。

——たとえば、どのようなところにポテンシャルを感じますか?

海が目の前の立地、デザイナーズ物件、口コミで従業員の評価が高いことですね。ほかにも、部屋のコンクリートが打ちっ放しの状態を活かせると思ったし、家具もいいものばかり使っていたので見せ方を変えれば映えるなと。初めてホテルを訪れた瞬間に黒字化できるビジョンが見えました。

あとは赤字の理由が明確だったんです。たとえば、ホテルの予約サイトに掲載している写真がパッとしない、SNSをやっていない、Web集客の対策がされていない。予約の導線がネットしかない中で、そこが確立されていなかったので貢献できるなと思いました。

——プロジェクトの一番の特徴を教えてください。

全員参加型の多数決制度を売りにしています。その場合、自分の意向と違う方向に進んでいく可能性があるのでリスクは抱えますが、それを踏まえても興味を持ってもらいやすいし、視聴者と一緒にホテルをつくる体制を整えていきたいなと。たぶん日本では前例がない「SNSから生まれたホテル」という位置付けを手に入れて、パイオニアになりたいです。

片岡流、SNS戦略のこだわりポイント

——SNSを使ったプロジェクトを進める上で、片岡さんがこだわっているポイントを聞いてみたいです。

今回プロジェクト用にSNSのアカウントを新しく作ったのですが、知名度がない状態から始める場合は縦型のショート動画でスタートダッシュをする方法しかなくて。InstagramのリールとTikTokとYouTubeに動画をアップして進めていくのが最初の戦略でしたね。

そのなかでも最初の数秒で興味を持ってもらうことが重要だと思っていて。「大赤字」「ど素人」のパワーワードを掛け合わせて「僕はいきなり沖縄の大赤字リゾートホテルの再建を託されたど素人」というキャッチコピーを作ったんです。たった2秒のセリフを考えるのに何十時間も使いました。

あとは、クレイジーハネムーンと今回の活動はリンクさせていないんです。戦略があってのことなんですけど、最初のうちは素性を明かしていませんでした。

——素性を明かさなかった理由とは?

各SNSのアルゴリズムに則って視聴者の属性をオーガニックに広げることで、今後リーチを増やしていきたいと思っているからです。発信の幅を広げすぎてしまうと視聴者の属性が変わって正しい人にリーチできず、本当にそのコンテンツを欲している人に届かなくなってしまうという特性があります。

興味のある層に発信することで離脱も減るしアカウントの評価も上がるので、長期的な目線で考えた結果、素性を明かしていませんでした。でも少しずつ素性がバレてきてコメント欄がざわついてきたので、僕が何者かを明かす動画をアップしました。

——そこまで戦略を立てているんですね。ちなみにSNSごとの運用方法も変えているんですか?

YouTubeはタイアップ企業との会談やMTGの様子、ライブ配信を中心にプロジェクトの裏側をドキュメンタリー風に展開しながら、双方向のやり取りができる運用にしています。Twitterは意見やアイデアの募集、TikTokとInstagramのリールはショート動画を中心に発信していて、再生数も伸びてきています。

TikTokと差別化するためにInstagramのオリジナル投稿は増やしたいので、沖縄へ行った際にホテルがある地域の紹介や映える写真と動画を撮りためて投稿していこうかなと。TikTokは1ヶ月で3万人、Instagramは1ヶ月半でフォロワーが1万人を超えたので、戦略がうまく機能したと思っています。

失敗さえもコンテンツに変えていく姿勢

ホテルの部屋にて。部屋ごとにコンセプトが異なります

——もしかして、全部1人で進めているんですか?

動画の撮影・編集、オーナーやクライアントとのやりとりも含めて全部1人でやっています。もう1人僕がほしいくらい手が回っていませんが、コメントやメッセージの返信など、人とのやりとりはできる限り自分でやりたいですね。

——そう思う理由があれば教えてください。

やっぱり自分の意思や考えを100%理解してもらうのは難しいと思うんです。今回はかなりコンセプトを突き詰めて自分の中に落とし込んでいるので、思い描くビジョンを形にするためにもしばらくは自分でやろうかなと。それくらい強い想いを持ってプロジェクトを進めています。

無理して頑張っている感覚はなくて、仕事と趣味の間という感じ。どうやったらより多くリーチを広げられるか、多くの人が面白いと思ってくれるかを考えるだけで楽しいので、そこがモチベーションではありますね。

——「旅 × シゴト」を実践している片岡さんらしいですね。プロジェクトを進めていく上で苦労していることはありますか?

うーん......本当にないですね。初めてなので大きな失態や失敗も出てくると思いますが、それもコンテンツとして動画で赤裸々に公開したいんですよね。綺麗ごとばかりを並べたものを発信するより、全部さらけ出すことで一切やらせのないリアルなドキュメンタリー感を出せればと思っています。

ホテル再建だけに留まらず、新たなエピソードを展開していきたい

ホテル近くの海は透明度が高く綺麗な景観が広がっています

——視聴者からはどのような反響がありますか?

「応援しています」「すぐ泊まりに行きます」など、めちゃくちゃ温かいコメントをいただいています。プロジェクトは2月中旬からスタートしたのですが、すでにたくさんの方が泊まりに来てくれましたし、一番最初に考えたコンセプトがうまく機能したなと実感しています。

——今後はどのようにプロジェクトを展開していきたいですか?

まずはホテルの一室をみんなで完成させたいです。そこで出てきた課題を活かしながら16室をそれぞれのコンセプトでカスタマイズして、今までにない新しいホテルに仕上げていきたいと思います。

——どんなホテルになっていくのかとても楽しみです! 最後に片岡さんの今後のビジョンがあれば教えてください。

エピソード2、エピソード3......みたいな感じで、沖縄のホテルだけではなく新たな物語を作っていきたいです。たとえば、村や限界集落の町、アパレルショップ、レストランなどのコンサルや再建に挑戦するのも面白いと思います。そのためにも今回のプロジェクトは絶対に成功させたいです。

SAGOJOは今後も旅人の挑戦を応援していきます!

カーボベルデの旅行代理店とのプロジェクトで訪れたサントアンタオ島にて

カーボベルデでの経験をきっかけに人生が大きく変わっていった片岡さん。人生という旅を楽しみながら物事に挑んでいく姿、初めてのことにも怯まず失敗を恐れずに突き進んでいく心の持ち方が視聴者にも伝わっているからこそ、応援してもらえるプロジェクトになっているのではないでしょうか。

派手さの裏に隠された片岡さんの戦略家の思考、地道に試行錯誤を重ねていく人柄を垣間見れました。今後もSAGOJOでは「旅 × シゴト」を実践し続ける片岡さんや旅人の挑戦を応援していきます。

 

片岡 力也(かたおか りきや)
旅人だった祖父の影響を強く受け、大学在学中にバックパック旅に没頭。飲食店のプロデュース、シェアハウスの経営、ライター、ドローンを駆使した動画制作などを手がける。2019年12月より世界一周へ出発。新型コロナウイルスの影響によりカーボベルデで足止めとなるも、その環境を活かしカーボベルデ政府とのパイプを構築するなど、活躍の幅を世界に広げている。現在は沖縄の赤字ホテルを建て直す『ど素人ホテル再建計画』に挑戦中。
<実績>
・カーボベルデ共和国代表 東京五輪公式アンバサダー
・世界的3つ星レストランシェフ Ivan Tronci氏(ローマ)PV撮影
・公式ライター(Expedia、ぐるなび等)
<メディア掲載実績>
・海外:ニューヨーク・タイムズ、CNN、BBC、ロイター通信、AFP通信 など
・国内(TV):『スッキリ』『ZIP!』(日本テレビ)、『あさチャン!』(TBS)など
・国内(その他):朝日新聞、NHKラジオ、TBSラジオ、『コロナの世界を照らす50のやさしい物語』など

ライター:SAGOJO編集部

『すごい旅研究所』の記事制作を手がける編集チーム。「旅 × シゴト」を目指すすべての旅人に役立つ情報をお届けします。

この記事のタグ

SAGOJOをフォローする

フォローして新着のシゴト情報をゲット!