<特集>北海道上川町
2021-12-01
日本一早い紅葉! 神々と暮らすまち、北海道上川町

北海道の上川町(かみかわちょう)をご存知ですか? 道外在住の方には、町の名前だけではいまいちピンとこないかもしれません。では、「層雲峡(そううんきょう)」あるいは「日本で一番早い紅葉」と聞いたらいかがでしょう? 多くの方が紅葉の名所として一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
北海道の北部から中央に向けて縦長に位置する上川総合振興局のほぼ中心に位置する上川町。人口3,358人(2021年9月現在)あまりの小さな町ながら、北海道最高峰の旭岳(2,291m)をはじめ、愛別岳(2,113m)、黒岳(1,984m)といった2,000m級の大雪山系の山々に囲まれたスケールの大きな自然と対峙している町です。
一方で、山深い奥地へ分け入っていくということはなく、北海道第2の都市である旭川市街からは高速道路で約1時間という距離です。旭川-羽田間はAIR DO、JAL、ANAが就航しており、札幌・千歳-旭川間も高速道路で結ばれているため、実は首都圏からもアクセスしやすい場所に位置しています。
そんな上川町へ、青森から駆けつけてくれた人気インスタグラマーでフリーランスタレントの平沼日菜子(かなこ)さん(@risu_kana_)と、カメラマン、筆者が、上川町の案内役の方にお話を伺いながらお邪魔してきました。
個人で行くだけでは味わえない上川町の魅力に触れることができたので、全5回の連載にしてその様子をレポートします。1回目の今回は、訪れた時がちょうど見頃だった上川町の紅葉と周辺スポットのご紹介です。
「神々が遊ぶ庭」と称されるカムイミンタラとは
日本で一番早い紅葉が見られる大雪山系の山々は、荒々しい活火山の山容に夏の残りの緑、そして秋の始まりを知らせる赤や黄色、オレンジの葉をつけた高山植物が織りなす摩訶不思議な光景と言えます。そこに、早い年なら9月の初旬には初冠雪が見られるため、神秘的としかいいようのない景色が広がります。
実は「大雪山」という山はありません。北海道最高峰の旭岳を始め、黒岳、赤岳などの山々の総称になるため、それぞれの山によって紅葉の見頃の時期は変わってきます。
上川町に裾野を広げる黒岳・赤岳は例年8月下旬頃から色付き始め、9月上旬には見頃を迎えます。その後、約1ヶ月かけて麓へと下りてくるため、7合目付近は9月上旬~中旬に、5合目付近は9月中旬~下旬、麓の層雲峡は9月下旬~10月上旬に見頃となります。
見たい山や標高、またその年の寒暖差によって見頃時期が変わるためちょっと複雑ですが、タイミングを合わせて訪問したい時は(一社)層雲峡観光協会(01658-2-1811)へ問い合わせてみるのがおすすめです!
アイヌの人たちはそんな秋の大雪山を見て「カムイミンタラ」、つまりは神々が遊ぶ庭と呼んだそうです。
カムイがアイヌ語で「神」を表す言葉であることは有名ですが、アイヌの人たちはヒグマを神の化身として畏れ崇拝してきたことから、単に「ヒグマの多い場所」という意味にもとれます。北海道にはこのようにアイヌ語から派生した地名や場所、そして伝説が数多く残っています。
神聖な場所や悲しい伝説の残っているところは人々が畏れ、敬い、容易には近づかないようになるため、もしかしたらカムイミンタラにもヒグマに近付かないように、というアイヌの人々が後世の人を思う優しさが隠されているのかもしれません。
しかしながら実際にカムイミンタラを目の当たりにしたら、「神々の遊ぶ庭」と呼ぶにふさわしい美しい光景が広がっていることは間違いありません。
カムイミンタラから層雲峡の紅葉まで、初級者も上級者も誰でも美しい紅葉を楽しめるのが上川町の魅力です!
さて、私たち一行が訪れた時は大雪山系の山頂の紅葉は終わっていましたが、山麓にある層雲峡の紅葉がちょうど見頃を迎えていたので、いくつかのスポットを巡って上川町の秋の空気を思い切り吸ってきました!
近年上川町が力を入れている冬のアクティビティ「犬ぞり」の1コマ(写真右)。犬たちのパワフルな走りによって想像以上の疾走感を楽しめるのだそう!
紅葉スポットをご提案くださったのは(一社)層雲峡観光協会の浅野 陽平(あさの ようへい)さん。秋田県に居住したことがある浅野さんでも、上川の冬は気温が低く寒いと感じるそうです。それもそのはず、上川地方は盆地になっており、道内でも夏は暑く、冬は積雪が多く寒い地方と言われています。
「秋田とは違って雪の質が良く、パウダースノーですね。逆に寒さを利用した氷瀑(ひょうばく)まつりも上川町ならではのイベントなので、幻想的な雰囲気をぜひ見に来てほしいです。冬以外では、火山によって形成されたスケールの大きな柱状節理(ちゅうじょうせつり)を見てほしいですね。これから行く『紅葉滝(もみじだき)』には、柱状節理が間近に見られるスポットがありますよ!」
とのこと。早速、紅葉滝へと向かうことにしました!
初心者でも気軽に紅葉狩りが楽しめる『紅葉滝』
気軽にできるトレッキングと聞いてはいたものの、歩き始めてすぐに落ち葉を踏みしめる音と石狩川支流の赤石川(あかいしがわ)が流れる音、時折吹く風の音しか聞こえなくなり、深い森の中にいるのを実感させられました。前日の雨の影響もあり、濡れた土のにおいや森の香りが強く、それがまたとても新鮮で空気の清々しさを感じます。
「不思議な形の木やまるごと苔に覆われている大きな岩など、トレッキング中もたくさんの発見があって楽しかったです!」と話す平沼さん。
散策路入り口(駐車場)から最終目的地である紅葉滝までは片道約700mで若い人の健脚でも25分程度を要します。
距離のわりに時間がかかるのは、後半につれて倒木や岩がゴロゴロした足下の悪い道になるためと、最後の100mは男性でも息が切れるほどの本格的な登山になるためです。
途中、散策路と並行するように流れている赤石川の小滝がいくつか見られました。この辺りまで来ると道幅もかなり狭くなってきますが、途中途中に木や石の名前と共に、入り口までと滝までの距離が書かれた看板が頻繁に立っているので、道に迷うことはないでしょう。
柱状節理の看板が出て来ました。見上げることしかできなかった柱状節理が、ここならすぐ触れる距離で間近に見ることができます。しかし、ここから道はさらに一変します。平沼さんも「最後の100mは本気で頑張って登りました!」とのこと。
やっと到着した紅葉滝は、写真で見るよりずっと水量が多く、轟音とどろく大迫力の滝でした。
落差こそ12mとさほど高くはありませんが、柱状節理の間から勢いよく流れてくる様子は勇壮で、平沼さんも「頑張って登ってきた達成感が感じられますね!」と、水しぶきを気持ちよさそうに浴びていました。紅葉と滝のマイナスイオンが感じられる穴場のスポットです!
無事下山して、達成感でいっぱいの平沼さん。紅葉滝散策路の入り口付近からも美しい紅葉と柱状節理のコラボを鑑賞できます。こちらも絶好のフォトスポットですので、お見逃しなく!
山に入るときに気をつけたいこと
紅葉滝への散策は、子どもから大人まで気軽に楽しめるトレッキングとして地元の人を中心に親しまれていますが、山に入ることに変わりはありません。入山するときは最低限、以下のことに気をつけて安全に楽しんでください。
- 熊の活動時間である早朝や夕方の入山は危険ですので止めましょう
- 一人での入山はなるべく避け、熊よけの鈴やスマートフォンなど音を出しながら行きましょう。時折、手を叩くなども有効です
- 熊のフンや足跡を発見したり、獣の臭いを感じたりしたときは速やかに引き返しましょう
- 山での飲食は厳禁です。ミネラルウォーター以外は持ち込まず、ゴミは必ず持ち帰ってください
- 万が一熊に出くわした場合は、目をそらさずにゆっくりと後ずさりしながら距離を取るようにしてください。子熊だからと言って写真を撮ったりしてはいけません。親熊が必ずそばにいます
- 最後の100mほどは本格的な登山となります。スニーカーやトレッキングシューズなどの運動靴が良いでしょう
ルールを守れば必要以上に恐れる必要はありません。ぜひ、日本一の紅葉を楽しんでくださいね!
大山層雲峡・黒岳ロープウェイで7分間の空中散歩!
続いて訪れたのは、まさに見頃を迎えた大雪山層雲峡・黒岳ロープウェイ。いよいよカムイミンタラを体感します。
こちらのロープウェイでは黒岳(1,984m)の五合目、標高1,300mまでを、7分間の空中散歩で楽しむことができます。さらにリフトで七合目まで上ることができるのですが、すでに山頂から中腹は見頃が過ぎていたので、山麓から黒岳五合目駅までの紅葉を満喫しました。
黄色く色付いた木々を上から見下ろすのはとても良い気分! もこもこした絨毯のような景色から、だんだんと山頂の険しい尾根が見えてくるのもロープウェイならではの景色で楽しめました。平沼さんも日本一早い紅葉を満喫しているようで、スマホのシャッターを押す指が止まりません!
黒岳五合目駅の屋上には、360°の眺望が楽しめる『ネイチャーテラス』があります。
ロープウェイ料金だけで誰でも入場できますので、見晴らしの良いテラスから壮大なスケールの層雲峡の紅葉を堪能してみてください。言葉を失うほどの絶景が広がっていますよ!
ロープウェイは紅葉シーズンのみの営業ではありません。オールシーズン運行しており、四季折々の景色を楽しむことができます。
層雲峡に誕生した『Columbia Field Store』で限定品をGET!
ロープウェイで下山してきた後は、山麓の層雲峡駅(ロープウェイ乗り場)に2021年7月末にOPENしたばかりのアウトドアショップ『Columbia Field Store』を覗いてみるのがおすすめです。
アウトドアブランド『Columbia』と、上川町がパートナーシップを組み層雲峡に誕生したブランド初のフィールドショップなのだそう。ここでしか入手できない『Daisetsuzan』のロゴ入りのボトルやTシャツなど、上川町とコラボした限定品もGETできます。
これからの季節は併設のカフェ『Black Mountain Coffee』の温かい飲み物で暖をとるのがおすすめ。紅茶やビール、焼き菓子などもあります。
広いスペースにはコンセントも用意されているのでリモートワークにもぴったりです。実際にPCを開いて作業されている方もちらほら見受けられました。窓の外には大自然が広がっていて常にリフレッシュすることができるので、きっと仕事も捗ることでしょう!
住所:北海道上川郡上川町層雲峡 層雲峡温泉黒岳ロープウェイ駅舎3Fスペース
まだまだある! 上川町の紅葉が楽しめる見どころスポット
北海道最高峰の山々に囲まれた上川町は、言ってみればすべてが紅葉名所なわけですが、なかでも初心者が気兼ねなく車で回れるスポットをいくつかご紹介します。
(左)銀河の滝、(右)流星の滝
ほぼ垂直に切り立った柱状節理の左右に見られる2つの滝です。落差120mで細くしなやかな流れを見せる銀河の滝(別名 雌滝)、落差90mで太く力強い流れを見せる流星の滝(別名 雄滝)と呼ばれています。雄雌並んでいることから夫婦滝とも呼ばれており、どちらも日本の滝百選に選出されています。
下から見上げると崖が大きすぎて同時に見ることはできませんが、近くに双瀑台(そうばくだい)という2つの滝を同時に見ることのできる展望台があるので訪れてみるのも良いでしょう。ただしこの展望台、斜度が相当きついそうですので、ご自分のペースでゆっくりと上ってくださいね。
ラストはこちら、大函(おおばこ)です。細長い岩石がまるで屏風のように規則的に並んで見える場所で、層雲峡で最も美しい渓谷美が見られる場所とも言われています。車で気軽に回れるので、ぜひ立ち寄ってみてください。
※小函遊歩道は落石の危険があるため現在は通行禁止です。
一生に一度と言わず、何度でも訪れたい上川町の大自然!
ガイドブックなどで絶景を紹介するときに「一生に一度は見たい」というフレーズが使われるようになって久しいですが、紅葉の本当の見頃はほんの1週間程度しかありません。それに層雲峡の渓谷美や大雪山系が見せる壮大な大自然は、どの季節に訪れても息をのむほどの美しさです。ぜひ一生に何度でも足を運んでいただけたらと思います。
今シーズンの紅葉はすでに落葉し、これから大雪山は深い雪に覆われた白銀のシーズンを迎えます。ぜひ来年は神々が遊ぶ庭と称されるほどの色とりどりの紅葉を見に、上川町へお越しください!
次回は、上川町のものづくり「神に捧げる日本酒造り」をご紹介します!
(撮影:松浦靖宏)

この記事はサマージャンボ宝くじの収益金を活用して作成しています。