すごい人生
2021-07-23
「先が見えないから、旅はおもしろい」旅行家・藤原かんいち 60歳、次なる挑戦は “恩返しの旅” へ

2021年5月、60歳の誕生日を迎えた藤原かんいちさん。職業は旅行家。これまでに訪れた国は90ヶ国以上、旅の総日数は約4000日に上ります。2000年には自ら旅行家と名乗るようになり、現在に至るまで旅をすることで生計をたてています。これまでに多くのスポンサーから協力を得ることで、電動バイクでの世界一周も成し遂げました。他にも50㏄バイクによる世界一周。国内では1号から507号まですべての国道を走り、さらに道の駅を1000以上めぐる「国道全制覇」といった個性的な旅も実現しました。
そんな藤原さんが今年の夏に挑戦するのは、E-Bike(電動アシスト付きスポーツ自転車)による日本一周です。しかも、ただ藤原さんが旅をするだけではなく、世界各国の人たちが里親となったぬいぐるみと共にめぐる『インターネットジャーニー』という旅の企画を予定しています。
SAGOJOでは近々、藤原さんのこの日本一周の旅企画へ同行し、サポートしてくれる旅人を募集する予定です。そこで今回は、藤原さんに『インターネットジャーニー』に込めた想いと、そこに至った背景について聞いてみました。
企画へ参加するにあたって、必要な資格は特にありません。この記事を読んで少しでも興味を持った方は、藤原さんのエネルギーと一緒に旅に出てみませんか?
藤原かんいちの次なる挑戦は『インターネットジャーニー』
この夏、藤原さんが始めようとしているのはどんな旅ですか?
ずばり『インターネットジャーニー』という旅です。移動の手段はE-Bikeで、10ヶ月ほどかけて日本全国をめぐります。でも、普通の旅ではなくて、ぬいぐるみという同行者がいる旅なんです。
世界中から集まった18ヶ国・18人に、この企画に参加する「トラベラーズ」になってもらい、それぞれの想いを込めた名前と性格をぬいぐるみに付けてもらいます。この18人は、日本に興味を持っていて日本を旅してみたい、と思っている外国人たち。ぬいぐるみはその人たちの代わりに日本中を旅します。私はいわば、その18のぬいぐるみたちのガイド役です。
絶景に出会ったり、アクティビティに参加したり、珍スポットを訪れたりと、トラベラーズのリクエストを受けて、ぬいぐるみに日本を満喫してもらいます。さらに僕が知っているとっておきの名所やスポット、SNSを見ている人たちがオススメする絶景や名所などもめぐりたいと思っています。旅の様子は随時SNSなどで発信、各トラベラーズはもちろん、世界中の人たちに楽しんでもらいたいと思っています。
どういった想いからこの企画が生まれたのですか?
ぬいぐるみを旅と組み合わせる、というアイデアは数年前から話題になっていますし、私自身もかなり昔からやりたいと思っていました。そんな中、2020年にコロナ感染が世界中に広がってしまい、簡単に海外旅行には行けなくなってしまいました。
「日本に行きたいのに、コロナのせいで行けない」という人は、いま世界中に数え切れないほどいるでしょう。オンライン上ではあれど、そういう人たちに日本を旅してもらいたい、日本の魅力を知ってほしい、というのが私の正直な気持ちです。
それに日本国内においても、まだ自粛ムードが強く旅をしづらい状況です。そんな中でも、しっかりと感染対策をすれば旅ができるんだ、ということをできるだけ多くの人に届けられたらと思っています。
ある意味、僕にとっては “恩返し” でもあります。これまで旅から多くのものを与えてもらい、世界中のたくさんの人にお世話になりました。その恩返しを、この旅でできればと考えています。
旅行家としてのルーツは「地平線」
これまでで最も印象的な旅について教えてください。
すべての旅が私にとっては大切なものですが、オーストラリアで見た360度広がる地平線は一生忘れられません。まだ20代の頃の話です。当時の私は「何ヶ月もかけてオートバイ旅行をしたい」という気持ちは強かったものの、一般的な社会のルートから外れてしまうことに不安がありました。ただそれと同時に、本当にやりたいことがあるのに、やらないことに矛盾を感じていました。
その悩みを吹っ切るきっかけになったのが、オーストラリアを原付で巡った旅でした。その時は特に行きたい旅先があったわけではなく、とにかく「地平線を見てみたい!」という一心で。「日本にはない、想像を遥かに超えた心がシビレるような大自然を体感してみたい」「死ぬまでに一度でいいから、見渡す限り何もない360度の地平線の中を走ってみたい!」という想いを形にしたのが、その旅だったんです。
オーストラリアに行けばその景色が見られる、という保証があったわけではありませんでしたが、結果的には正解でしたね。
地平線を目指したオーストラリアの旅、詳しく聞きたいです。
目指したのは、オーストラリアの中でもメジャーな観光地ではなく、険しいオフロードとして知られるストックルート。道なき道を何日も走るような道程だったため、諦めようかと思う瞬間もありました。それでも私が見たい景色はここにしかないと思い、決死の覚悟を持ってストックルートに突入しました。
3日目。ついに360度の地平線の世界にたどり着きました。半径100km以内には自分しかいない。これが見たかった景色だ……と感極まって、それ以上進めなくなってしまいました。その日はその場でテントを張って泊まったのですが、夜には空が星で埋め尽くされていました。あの光景は一生忘れません。
その時に、自分の中で扉が開いた感覚がありました。「やりたいことをやってもいいんだ」「いつだってできるかどうかは自分次第」「やるかやらないかでしかないんだ」ということを身をもって知った瞬間でした。そこからは原付でのサハラ砂漠縦断や北極圏走破、地球縦断夫婦の旅など、自分のやりたいことをどんどん叶えていきました。
移動手段として原付を使うことに、何か強い想いがあるのでしょうか?
オーストラリアやサハラ砂漠のような広大な場所だからこそ、車や大きなバイクで旅するより、小さなバイクで旅した方がおもしろくないですか?
原付とかミニバイクって “移動手段” として見ると、本当にちっぽけなものじゃないですか。スピードも出せないし、ものによってはおもちゃみたいで。そういう小さな存在である原付と自分を重ね合わせているところもありますね。
私はもともと勉強が苦手だったんです。特に英語なんて全然できなかった。別に世界に出る気もないし必要ないでしょ、なんて言って完全に諦めていました。社会に出たら出たで周りにはすごい人がいっぱいいて、特別な才能を持たない自分の小ささを知りました。
そんな自分でも、目指す場所へ辿り着くことができる。それも、四駆の車や大型のバイクではなく、小さな原付で。そういう旅のほうがロマンを感じるし、ワクワクしませんか? もし実現できたら、誰かに勇気を与えられるかもしれない。
私自身、原付くらいのコンパクト感やスピード感も気に入ってます。もともと一番小さな存在なんだから、たとえ追い抜かれたとしても張り合わなくていい、自分のペースで進めばいい、と思えるんですよね。
インターネットジャーニーの見どころは、トラブル!?
次の相棒は原付でもなく、E-Bikeと聞きました。
原付の旅はやり切った感があるので、次はもっと困難な旅をしてみたい、さらにはまだ実現した人がほとんどいない新しい乗り物がいいと思い、E-Bikeにしました。昨年11月から準備を開始し、ヤマハ発動機様からのご支援もいただけることになりました。
原付やミニバイクよりもさらに、体力的に大変ではありませんか?
僕にとっては好奇心が旅の原動力なので、経験していないことをやってみたい気持ちのほうが強いんです。新しい世界に足を踏み入れるワクワクのほうが大きいというか。それに私は「どうなるかわからない」ことに出会えるのが旅の価値であり、またおもしろさだと思っていて。今回の旅では、そういった部分もトラベラーズや視聴者の皆さんに届けたいと思っています。
観光地にぬいぐるみを連れて行ってただ記念写真撮るだけ、ではなくて、悪天候やパンク、あるいは疲労困憊で動けなくなったとか、そういったトラブルが起こった時のハラハラ感も一緒に楽しんでほしい。むしろそっちの方が見てほしい気持ちもあるかもしれません。
どういった形で旅の様子を配信しますか?
とりあえずは YouTube や Instagram などのSNSを考えています。トラベラーズにリクエストされた場所での映像や写真はもちろんですが、旅の途中で私がいいなと思って撮った写真なんかも投稿していく予定です。フォロワー次第ではありますが、後々はZoomを使った生トークやライブ配信もできればと思っています。“インターネット” ジャーニーだからこそ、オンラインツールをできるだけ活用してある程度リアルタイムに近い形で共有することで、よりリアルな旅の臨場感を感じてもらえたら嬉しいですね。
旅の期間は10ヶ月とのことですが、詳細は決まっていますか?
まだ細かくは決まっていないのでざっくりとした予定ですが、東日本と西日本それぞれを延べ4〜5ヶ月間くらい旅しようと思っています。東日本は2021年8月〜2022年3月頃に、西日本は2022年の4月〜2023年の3月頃まで、という想定です。
ただ今回の企画は、旅の終了とともに終わるわけではありません。というのも、一緒に旅をしたぬいぐるみたちは、トラベラーズへプレゼントしたいと思っています。その際には、旅先で私が撮った写真を使って作るフォトブックも同梱する予定です。さらにその先に考えているのは、いつか18ヶ国のトラベラーズを日本に招待して、実際に日本の旅を楽しんでもらう、というものです。
他にも、トラベラーズ自身を紹介する機会も旅の途中で作りたいなと思っています。全世界のトラベラーズと旅の視聴者がつながって、将来はその視聴者がトラベラーズの国へ旅しに行ったら嬉しいですよね。そんなインターネットジャーニーを通しての横のつながりも作っていけたら、もっと盛り上がるんじゃないかなと思っています。
同行者も募集して、新たな旅の形を生み出す
旅の同行者を募集するとのことですが、どんな人が対象ですか?
旅の途中、部分的に『インターネットジャーニー』に合流してくれる同行者を募集します。これまでは基本的に一人旅でしたが、人と一緒に旅できるというのは新しい何かが生まれそうで楽しみにしています。
同行するための条件は、特にありません。E-Bikeは電動アシストが付いているので、体力にそれほど自信がなくても大丈夫だと思います。年代や性別も問いません。自転車に乗れるならOKです! 旅を共有するのが目的なので、SNSや動画撮影が得意な人だとありがたいですね。旅慣れた人でももちろんOKですが、あまり普段は旅をしない人の視点は自分にはある意味新鮮なので、おもしろい化学反応が生まれて良いかもしれません。
あるいは、いま人生に変化を求めている人や何かに行き詰まっていると感じている人は、この旅が殻を破るきっかけになるかも。実は私は人生相談にのるのも得意なんですよ(笑)
何にせよ、私自身も旅路を楽しむつもりなので、一緒に楽しんでくれる旅人なら誰でもウェルカムです!
最後に一言、お願いします。
私にとって、旅とは希望そのものです。旅の力にこれまで何度も私自身が助けられてきたように、一人でも多くの人に旅の力を感じてもらえたら、それ以上の喜びはありません。
旅って人によっていくらでも形を変えられる、自由なものだと思うんです。遠くに行くことだけじゃなく、小さな発見だったり、新しい視点を得ることだったり、自分の中で何か変化が生まれることは、すべて旅だと言えるんじゃないでしょうか。そういう変化のきっかけを与えられるように、『インターネットジャーニー』を盛り上げていきたいと思います。
19人目の同行者は、あなたかも!?
還暦を迎えながらも、まだまだ前へ前へと進むエネルギーの塊のような藤原さん。そのパワーを感じながらの自転車旅に、あなたも同行してみませんか?
同行者の募集は近日、SAGOJOサイト上にて公開予定です。もちろん旅路をオンラインで楽しむ視聴者も大歓迎。藤原さんと一緒に全国を旅するような気分で、インターネットジャーニーを楽しんでみてください!
▷ 藤原かんいち Webサイト
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▷ 連載コラム:藤原かんいちのE-Bikeペダル旅(日刊スポーツ)/ eバイク旅ノート(e-Bike Japan)