すごい人生
2021-03-03
「すごい旅人」片岡力也氏インタビュー(後編) コロナ禍でカーボベルデに暮らす旅人夫婦の軌跡

SAGOJOの「すごい旅人」第1号の片岡力也さんへのインタビュー、後編です! 前編の記事では、世界一周ハネムーンの途中でコロナ禍が直撃する中、アフリカの島国カーボベルデで東京オリンピックアンバサダーにまでなってしまった片岡さんのこれまでの歩みをご紹介しました。
後編となる本記事では、片岡さんの旅人としての原点や考え方の根本に迫っていきます!
「一生不自由なく旅をしていく」ためにどんな力を身につけるか
−−片岡さんのエピソードはすごく夢がある一方で、片岡さん自身は遠くをぼんやり見るのではなくかなり近いところを見ている印象があります。ポリシーとか、あるいは目指すゴールというのはあるんですか?
元々のポリシーは、「一生不自由なく旅をしていくこと」。日本にいるとき、10年くらい前から、不自由なく好きな時に好きなところに旅をすることが永遠にできればいいな、と考えていて。たとえばお金や日程の制約なく、思い立って「あさって海外に行こう」となればすぐに行けるとか。だから、時間や場所の縛りがある仕事を引き受けたことがないんです。
−−日本にいるときからずっとそうなんですか?
そうですね。新卒で会社に入ったときにちょっとだけありましたけど、それも1年ぐらいです。会社を辞めてからはずっとそうです。
−−ただ、そのためにはお金を生み出さなければならないし、いろんな工夫も必要になりますよね。
旅と両立できる仕事を常に意識している、ということはあります。動画制作を始めたのもそうだし、ソーシャルメディアを使った発信とか、web関連に詳しくなったことは自分のスタイルに活かせていますね。
一方で、日本ではシェアハウスを経営していたり。これがゲストハウスであれば僕がいないと辛いと思うんですが、シェアハウスはある程度入居者が埋まってたらいなくていい。
−−なるほど。場所に縛られないという目的のためにすべきことが決まっていくあたり、今のカーボベルデでの生き方に通ずるところがありますね。
▶︎ 片岡さん運営のシェアハウス「Hakunamatata」(Facebookページ)
カーボベルデに縛られているっていう意識はない。大好きな国
−−ちょっと意地の悪い質問かもしれませんが、片岡さんが自由である一方で、世界が不自由になっているかもしれない。たとえばコロナの影響で自由に旅ができませんよね。この状況がもっと続いたらどうしますか?
それなら、たぶんカーボベルデにずっといると思いますね。今も、別にカーボベルデという場所に縛られているって意識はないですもん。長期滞在になったことの背景には確かにコロナの影響があったけれど、今はもうカーボベルデが大好きになりすぎて、旅をせずにずっとここにいてもずっといいというぐらいに、この国に貢献したいと思っています。島の人にはすごく良くしてもらったし。還元することでこちらにもいいことが生まれると思いますし。
−−カーボベルデの魅力って、どんな部分にあるんですか?
まず、海はもう世界有数の綺麗さです。それから、「人がいい」というのはありがちではあるんですが、めちゃくちゃ人がいい。たとえば僕のいるサル島犯罪率も、数字を見たことはないですが、たぶん日本より低いと思います。警察とか超ヒマしてるんですよ(笑)。
−−島国とはいえ、他のアフリカの国だったらちょっとありえない。
国民のみんなの合い言葉、挨拶のように言うのが「ノーストレス」という言葉なんです。毎日必ず聞きます。スワヒリ語の「ハクナ・マタタ」とか、沖縄の人が言う「なんくるないさ」にも似ているかもしれない。それが文化として根付いているんですよ。
戦前生まれで世界を旅した「じいちゃん」の存在
−−片岡さんは、そもそもなぜ旅に惹かれるようになったんですか?
それは、僕のじいちゃんが旅人だったんですよ。普通の旅行者ですけど、世界70カ国ぐらいを訪れていたのかな。
−−いや、普通の旅行者といっても、その時代ではかなり珍しいことですよね。
子どもの頃に戦争を体験していますから、生きていれば80歳代だったはずです。
−−まだ1ドルが360円に固定されていた頃から旅をされたわけですよね?
大学時代に株を始めて、株のお金で一生旅をしてたって感じの人です。全部使い切って亡くなりました、という。一応ゼネコンの会社に勤めて結構上の方まで行っていたんですけど、給料は1円も自分で使ったことがないらしいんですよ。全部ばあちゃんにあげて。自分は株のお金で遊んでいたらしくて。
−−へぇー……すごい。
子どもの頃から海外の話を聞かされていましたし、実際にいろいろ海外に連れて行ってもらっていました。家族で行ったこともあるし、小学生のときにはじいちゃんと二人旅でヨーロッパに行ったりとか。じいちゃんだけが旅をしていても、必ず現地から葉書に英語を書いて連絡をくれていました。じいちゃんは僕に刺激を与えようとしていたらしくて。
−−うーん羨ましい……しかし、子どもの頃にそんなことを体験してしまっては、片岡さんも旅人にならずにはいられないですよね。なにか、旅人としておじいさんから受け継いだこと、みたいなエピソードってありますか?
ひとつマジですごいなと思ったことがあって……じいちゃんがスイスのマッターホルンに行ったときに、マッターホルンの頂上付近に唯一あるレストランで地ビールが飲めるんですが、そこでビールを持って写真を撮ったんですよ。それで、僕はその写真のことを一切知らずに大人になってからスイスに初めて行ったとき、同じ場所で同じ写真を撮ってるんですよ。ビールを持って。
−−それはすごい!
それはもうじいちゃんが亡くなったあとで。おばあちゃんの家に行って昔のアルバムを見ていたら、「この写真見覚えあるぞ」って。見比べたらまったく同じ写真だった。僕はスピリチュアル系のこととか一切信じていないんですけど、これはすごいなと思いましたね。
−−ご両親だとか、ほかのご家族も旅人だったりするんですか?
両親は破天荒なじいちゃんと違って真面目な感じなんです。でも、最近日本のメディアにも取り上げてもらえるようになって、家族は結構喜んでくれている感じかな。
未来は予測できない。超フレキシブルに入ることだけは決めている
−−カーボベルデで、現在進行形で進んでいる新しい活動とか、近い未来の予定などはありますか?
学校建設に携わったりもしています。ある女性が、学校へ通えないような貧困層の子どものために学校を作りたいと言っていて。今はその資金集めをしているんですが、それを僕が手伝っています。ネットでのPRとか。今はPRのことならあの日本人に相談しよう、となっているので。
−−学校まで。
今はカーボベルデで会社を始めようとしているんですよ(※インタビュー当時。2021年3月現在は登記が完了し、正式に法人を設立している)。日本でも会社を作ったことなんてないのに、カーボベルデで起業するなんて考えてもみなかった。毎日「自分の人生を変えてる感」がすごくて、めっちゃ面白いです。
−−どんどん広がっていきますね。今後こういうことをしたい、と具体的に思い描いていることは何かあるんですか?
よくされる質問なんですが、いつも答えるのが「全く決めないでいく」ということなんですよ。学校建設でも法人設立でも、少しも想像できないことだった。未来には常に想像できないことが起きているので、何か決めておくことは必要ないなと思って。
−−未来について具体的には決めたりはしないけど、一方で受け身ではなく能動的に動くというか。
そう。「超フレキシブルに入る」ということだけを決めています。
−−SAGOJOの『すごい旅人』としても、想像もできないような未来に向けて、ますますご活躍されることを願っております!(笑)
はい、よろしくお願いします(笑)。
おわりに
『すごい旅人』片岡力也さんの前後編にわたるインタビュー記事、いかがでしたか? 記事内でも触れたように、片岡さんは多くのメディアに露出していますが、それらで描かれている彼とはまた違う側面が垣間見えたのでは。
先を予測できない旅をする旅人にとって、「情熱」と「理性」のバランスの取り方はとても大切なこと。片岡さんの姿勢は、多くの方にとって参考になるものかもしれません。
『すごい旅人』片岡さんのますますの活躍にご期待ください! そしてSAGOJOは、さらにたくさんの魅力的な『すごい旅人』の皆さんの登場を心待ちにしています!
▶︎ SAGOJOの『すごい旅人』認定マネジメント制度についてはこちら
▶︎ SAGOJOでは現在、片岡力也さんと一緒にカーボベルデやアフリカを舞台にした新プロジェクトを企画立案・推進してくれる旅人を募集中です!
1990年生まれ、カーボベルデ共和国在住(世界一周中)
旅人だった祖父の影響を強く受け、大学在学中にバックパック旅に没頭。海外駐在に憧れ本田技研工業に入社するも、国内担当の部署に飛ばされ配属後4ヶ月で退職。その後は、飲食店のプロデュース、シェアハウスの経営、大手メディアの公式ライター(取材・撮影・執筆)、ドローンを駆使した動画制作などを手がける。2019年12月より世界一周へ出発。新型コロナウイルスの影響によりカーボベルデで足止めとなるも、その環境を活かしカーボベルデ政府とのパイプを構築するなど、活躍の幅を世界に広げている。
・カーボベルデ共和国代表 東京五輪公式アンバサダー
・世界的3つ星レストランシェフ Ivan Tronci氏(ローマ)PV撮影
・公式ライター(Expedia、ぐるなび等)
・海外:ニューヨーク・タイムズ、CNN、BBC、ロイター通信、AFP通信 など
・国内(TV):『スッキリ』『ZIP!』(日本テレビ)、『あさチャン!』(TBS)など
・国内(その他):朝日新聞、NHKラジオ、TBSラジオ など