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すごい旅のハウツー

2016-04-27

海外取材の裏側をのぞき見! プロライターの取材スケジュール大解剖

はじめまして。旅行ガイドブックの取材・執筆を中心にフリーライターとして活動しているIori Iwataです。

旅行ガイドブックの取材というと、いろいろな国に行けて、観光名所を見て、経費で美味しいモノが食べられて……と、のんびりしたイメージをもつ方が多いようです。

しかし、実際の取材はなかなかタイト。短い時間と限られた予算内で、数多くのレストランやショップ、観光地などを駆け足で巡り、情報はもれなくしっかり押さえなくてはいけません。取材する国や地域の知識はもちろん、体力と丈夫な胃袋も必要な仕事なのです。

今回は実際の取材スケジュールを元に、計画のコツや、海外取材ならではのトラブル対処法をご紹介します。

意外と大変!? 台湾取材3泊4日スケジュール

海外で取材をする場合、どんなスケジュールで動いているのかを、台湾での取材を一例にご紹介します。

1日目(現地到着日)

羽田空港を7時台の便で出発し、昼頃に台北松山空港に到着。通貨の両替を済ませたら滞在先のホテルへ直行します。1時間ほど休憩したら、ホテルのロビーでカメラマンと軽い打合せを済ませてから出発です。

台湾では運賃が比較的安いこともあり、タクシーでの移動がメインになりますが、ライターが1人で回る場合や、ちょっと遠くへ移動する際などはMRT(地下鉄)や路線バスを使用することも。初日は時間が限られているため、市街地にあるレストランやバーといった物件を数件取材して終了です。

2日目

翌日は早い時間から地元の人で賑わうローカルな朝市へ行き、食堂や屋台でアポなしの飛び込み取材をしながら、朝ごはんも済ませます。雑貨店やレストランなどがオープンする時間帯になったら、ほぼ1時間に1軒というペースで取材をこなしていきます。取材先の都合が優先なので、お昼の時間にのんびり食事ができることは少なく、取材先での試食や、ファストフードなどで済ませることも珍しくありません。

夕方からは台北の名物スポット、士林夜市でのモデル撮影です。夜市らしい賑やかな風景、できたてアツアツのB級グルメ、山盛りかき氷など次々と撮影してきます。

3日目

午前中には台北最古の寺院・龍山寺と、白亜の巨大建築・中正紀念堂の、観光スポットを取材。雰囲気だけでなく、建物の細かい装飾や神像・仏像、お参りの様子などを細かく撮影していきます。

再び市街で雑貨店やレストラン、茶芸館などを取材した後、台湾鉄道とタクシーを使って、九份という郊外にある坂の街へ。赤提灯が点る階段道や幻想的な夜景を撮影しつつ、眺望自慢の茶芸館や名物グルメの取材もきっちりこなします。

台北のホテルに戻るとすでに22時すぎ。翌日の取材先へのアクセス、撮影内容を再確認したら、やっと就寝です。

4日目(帰国日)

最終日は早々にホテルのチェックアウトを済ませたら、荷物を預けて出発。タイムリミットの正午までは、まだまだ取材が残っています。漢方薬や茶葉の老舗が立ち並ぶ問屋街を中心に、イマドキのカフェや雑貨店なども撮影して回ります。

最後にやり残したことがないか確認したら取材終了。ホテルで荷物をピックアップして、夕方の便で帰国となります。

取材スケジュール作成のコツ

取材する件数と内容に応じて日数を決める

例えば、グルメ特集のメインで紹介するレストランや、施設の多いホテルなら90分、カフェや雑貨店なら60分、小さな観光スポットや食堂なら30分と、取材先ごとに必要な所要時間の目安は変わります。まずは、何日あればすべての取材物件を回ることができるかざっと計算しましょう。

移動が必要な郊外の街歩き特集、大きなショッピングセンター、アミューズメントパークなどの取材が入ると、半日~1日を要することもあるので、取材対象に合わせて、必要な日数を決めていきます。

朝や夜もフル稼働! 限られた時間を有効に

スケジュールを組む上で大切なのは、お店や施設の取材可能な時間帯を把握しておくことです。飲食店なら11時頃から22時頃まで営業という店が多いですよね。しかし、どの時間でも取材を受けてもらえる訳ではありません。ランチやディナーの時間は避け、できれば混雑する週末もはずしたいところです。

お店がオープンする前の朝は寺廟や市場、公園などの観光地を撮影し、ランチ、ディナーの時間帯はショップの取材、夕方の夜景が灯りはじめるころにバーやクラブといったように、ジャンルごとに分けて組んでいくと時間が有効に使えます。

また取材NGという店が多い週末は、アポイント不要な観光スポットの取材や、モデル撮影に使うエリアの下見などにあてるなどしています。

一番大事かもしれない! 移動時間の短縮

あまり規模の大きくない都市だとしても、一番東側のエリアで取材して、次に西側のエリア、また東に戻って、などとしていたら、移動時間、経費ともに無駄が多くなってしまいます。同じエリアはなるべく同じ日に取材できるように組んで、空いた時間は街並みの撮影などにあてたいところです。

現地での急な予定変更……さてどうする!

スケジュール組み直しはこう乗り切る

「時間通りが当たり前」の日本と違い、海外ではアバウトな感覚の人が多いのも現実です。約束の時間に行っても担当者が不在だったり、取材の話がまったく伝わっていなかったりと、ちょっとしたトラブルが発生することはしばしば。そんなときこそ腕の見せ所です。

まずはお店の人に「今日取材できないと非常に困る」とお願いして何とか取材をさせてもらう、多少強引な心をもつこと。どうしてもダメならスケジュール表を確認し、別の日に空いている時間がないか確認。空いていなければ、今後取材する予定の店の中から、今から行っても対応してくれそうな店を探します。

連絡して今から取材OKということになれば、もともと取材する予定だった店と時間を入れ替えます。焦らず臨機応変に対応しましょう。

青空をバックに撮影のはずが大雨……

取材のアポイントは1週間以上前に入れることが多いので、天気まではなかなか読めません。お店の取材なら雨でも問題ないですが、大自然の絶景スポットやビーチリゾートなどを撮影する予定だった日が、朝から大雨では真っ青です。

難易度はやや高いですが、別の日に取材する予定だった店を、可能なかぎり雨の日に取材できるよう日時変更にトライしてみましょう。お国柄にもよりますが、責任者や広報担当者さえ連絡がつけば、なんとかなるパターンが多くあります。狭いエリアなら直接お店に飛び込みで交渉してもいいでしょう。なんとか調整して、晴れの日が訪れるチャンスを待ちます。

海外取材でたまにある、こんなトラブル

食べ過ぎ&食あたり

旅行ガイドブックの場合、半分以上が食べ物屋さんの取材ということも。多い日には1日6~7軒のレストランへ行ったり、連続でスイーツ店だったり、胃袋への負担は大きくなります。撮影と同時に試食もしますが、美味しいからといって全店で完食していると、3軒目ではもう美味しさを感じなくなり、あとは苦しいだけということに……。

またアジアでは、屋台の取材後に食あたりを起こしたこともあります。食事の量、内容には十分注意するとともに、胃薬はなるべく持参しましょう。

車上荒らし

これは取材に限らず海外旅行の全般にいえますが、ホテルの駐車場を狙った車上荒らしは少なくありません。

私もあるリゾートでレンタカーを借りて取材をして、ホテルの駐車場に停車していた際に被害にあい、車内に置いていたモデル撮影用の衣装を盗まれた苦い経験があります。車自体の損傷は保険でなんとかなりますが、貴重品、取材用の機材などは車内に残さないよう注意したいものです。

撮影禁止の建物や場所に注意

国によっては歴史的な建造物が、政治や軍事関連の施設として現役で使用されています。何気なく写真を撮っていると銃を持った警備兵に注意されたり、画像データの消去を求められることもあります。もし注意された場合は、素直にしたがいましょう。

機材の破損・紛失など

カメラ機材が故障したり、紛失してしまうこともあり得ます。もちろん海外旅行者保険に入っていれば保障されますが、その後の取材の進行に大きな影響が出てしまいます。

できればカメラは代替機を一台、さらに現地で同様の機材が手に入りそうな店をチェックしておくとよいでしょう。

まとめ

海外取材のスケジューリングと気をつけたいトラブル事例などを、簡単にご紹介させていただきました。

スケジュールとしてはなかなかハードな仕事ですが、普通の旅行では関われないような人や場所との出会いが待っています。例えば有名な料理人や超高級ホテルの支配人から話を聞いたり、名レストランの調理風景をのぞかせてもらったり、取材者ならではの楽しさがたくさんあります。

理想的なスケジュールを立てて、ぜひ取材者として旅にでかけてみてください。

文:Iori Iwata 編集:emiko.m

ライター:Iori Iwata

旅行ガイドブックの執筆を中心に活動するフリーライター。東京の編集プロダクションと中国・上海のフリーペーパー制作会社で約10年勤務した後に独立。国内・海外問わずさまざまな場所を取材し、旅行情報をわかりやすく発信している。

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