カナダから中富良野町へ 国をこえた移住先でフォトサービスを展開【地域おこし協力隊インタビュー】
北海道 中富良野町で、観光スポットを巡りながら参加者の写真撮影を行う「フォトツアー」を手がけるのは、地域おこし協力隊2年目の牧田 ダニエルさん。カナダが故郷の牧田さんは、学生時代に経験した2度の日本留学をきっかけに中富良野町への移住を決めました。
国境をこえて移住を決めたきっかけやフォトツアーの内容について、牧田さんにお話を伺いました。
国を超えて、辿りついた中富良野町への移住
―シンガポールとカナダで生まれ育った牧田さん。日本へ興味を持ったきっかけを教えてください。
父親が日系企業で働いていたことや、日本のアニメを見て育ったこともあり、日本は幼い頃からなじみのある国でした。アニメの内容を理解したくて、父が持っていた本で日本語を勉強するようになったのが12才の時。高校生になった頃には、日常会話レベルの日本語を理解できるようになり、2ヶ月半の函館留学をかなえることができました。
日本の住みやすさを実感したこともあり、大学在学中に再来日して北海道大学に1年間留学しました。北海道大学周辺の札幌の街は地下道が整備されていて徒歩でも生活しやすかったですし、大通り公園の花がいつもきれいに整備されていたことにも感動しましたね。
その頃から、北海道内の情報や旅の様子をSNSで発信しはじめたんです。自分で撮影した写真や動画を編集して英語と日本語を交えて投稿すると、たくさんの外国人から反響があって。今では1万人以上の人に見てもらえるようになりました。
その後、社会人になるタイミングで再び日本・東京にやってきました。
―東京に単身で移住とは大きな決断でしたね。
学生時代から日本での生活に憧れていたので、コロナによる規制が緩和されてから来日しました。東京では、住む部屋も自分で探しましたし、外資系のコンサル企業にも就職をして、日本で会社員として働く経験ができました。仕事では、海外のクライアントを相手にシステムの分析などをしていました。
―その後、東京での生活を経て中富良野町に移住したきっかけを教えてください。
来日してすぐの頃はリモート勤務が中心でしたが、だんだんと出社が増えて、人の多い東京の生活に疲れてしまって。そんな時に、満員電車の中で北海道の移住案内の吊り革広告が目に留まって、学生時代の北海道での生活を思い出しました。同じ会社で働いていたパートナーが札幌出身だったこともあり、結婚を機に北海道への移住を決めました。
中富良野町は、夫の実家と祖父母の家の中間地点でしたし、SNS活動で培った経験を町の観光促進に活かせると感じて移住先に選びました。私は花が好きなので、中富良野町のラベンダー畑の風景が大好きだったことも理由のひとつです。あとは、観光地ではあるけれど夏の繁忙期、冬の閑散期と人の往来がはっきりしているのも、メリハリがついていていいなと思っています。
中富良野町の美しい景色とともに、思い出を形に残してあげたい
―地域おこし協力隊の活動として「フォトツアー」を提案した理由を教えてください。
私は企画課所属なので、観光促進にまつわる課題を解決することがミッションです。着任後、自分にできることを探すなかで、観光客の滞在時間の短さがまちの課題だと知りました。ラベンダー園を楽しんだ後はすぐに隣のまちへ行ってしまったり、町内の観光エリアが分散しているために、観光客の足がまちの隅々までは伸びないんですね。
中富良野町は十勝岳連峰やラベンダー園など豊かで美しい風景が日常として存在していて、見る場所や時間によっても景色が表情を変えるんです。そういう何気ないけど唯一無二の魅力を、このまちに住む私の目線で多くの人に届けたいと思いました。ツアーアテンドをして町内を回りつつ、写真撮影をすれば中富良野町での思い出を形に残して持って帰ってもらうことができますからね。
―フォトツアーの準備はどのくらい進んでいますか?
昨年の7〜8月にかけて、モニター撮影会を行いました。まずは事業化に向けた試行として、撮影スポットを2ヶ所に絞った撮影会のような形をとりました。会場は、ラベンダーが満開の北星山ラベンダー園と、そこに隣接した森林公園。中富良野町のラベンダー園は本当に景観が素晴らしくて、撮影場所として人気のスポットなんです。
SNSを使った告知の結果、想像をこえる87組の方がモニターとして参加をしてくれました。地元の方だけでなく、関東や九州、1番遠い方はなんとシンガポールからのお客様でした。元協力隊や知人のカメラマンにも協力してもらい、撮影は私を含めた3人チームで。暑い季節だったので私たちがヘトヘトになってしまいましたが、お客様はとても喜んでくれました。
今後は撮影スポットに私らしさを加えて、地域おこし協力隊退任後に有料のサービスとして展開できるように準備を進めていきます。
―カメラの腕はどこで磨いたのですか?
本格的にカメラをはじめたのは学生時代です。ポートレート撮影をした時に、モデルになってくれた友人が写真の出来をとても喜んでくれたんです。それがうれしくて、父の古いキャノンのカメラを使って写真を撮るようになりました。
今は、観光のオフシーズンに町民向けの写真講座も開いています。まちで偶然会った受講生が「自分でいい写真が撮れた」と写真を見せてくださったりして。やりがいを感じる瞬間ですね。
ルーツを大切に、中富良野の景色を楽しむカフェを開きたい
―今後、中富良野町でやりたいことはありますか?
フォトツアーの運営を軸にしたフォトサービスで起業をすることに加えて、中富良野の景観を活かせる場所でカフェを開きたいと思っています。熊本県で出会った、田んぼの中にポツンとたたずむカフェが私の中の理想形。風景とお店が一体化しているような素敵なカフェなんです。
カフェのテーマは、私のルーツであるフィリピン、シンガポール、カナダの家庭料理を提供する多国籍料理カフェです。メニューが決まったら試食会をしてまちの人から意見をもらいたいと思っています。今は土地探しの段階ですが、協力隊任期中のオープンを目指しています。
―最後に、地域おこし協力隊に応募するか悩んでいる人にアドバイスはありますか?
中富良野町は新しい挑戦を受け止めてくれる人が多いまちです。地域おこし協力隊でいられる時間は3年しかないからこそ、私はこの期間にいろいろな挑戦をしてみようと思っています。
ダブルワークをしている人もいるので、都会ではなかなか経験できないキャンプ場や観光施設でアルバイトをしてみたい人にもおすすめです。優しい人が多いので、人とのつながりを大切にしながら活動できますよ。
取材・執筆:八子結奈
SAGOJOの旅人/ライター。情報誌の編集記者を経て、現在はフリーで活動中。暮らしや文化、地方創生にまつわる執筆実績多数。