札幌と中富良野町で2拠点生活 空き家改修で目指す「人と出会う」民泊併設の飲食店【地域おこし協力隊インタビュー】
北海道 中富良野町の地域おこし協力隊として、農業体験プログラムの受け入れなどを担当する「テレワーク推進コーディネーター」として活動する清水 早都子さん。一方で、札幌市内で民泊を運営しながら、中富良野に2軒目の民泊兼飲食店の立ち上げ準備を進めています。
そんな清水さんに、それぞれの活動にかける想いや今後の展望についてお話を伺いました。
中富良野町への移住は、素敵な物件との出会いがきっかけ
―清水さんが中富良野町への移住を考えたきっかけを教えてください。
やりたいことにピッタリな物件との出会いが、中富良野町への移住のきっかけです。19才で地元の帯広から札幌へ出て、40代になってから札幌市内のマンションの一室で民泊をはじめました。運営は今年で9年ほどになり、飲食店付きの民泊をやってみたいという気持ちで新たな物件を探し始めたのですが、なかなか条件の合う物件とは出会えませんでした。
そんな時に、元々飲食店や民泊を営んでいた知人に「ウチを引き継いでやったらどうか」と声をかけてもらいました。その物件が、私を中富良野町に連れてきてくれた物件です。
実はそれまでも何度かお声がけはあったのですが、物件が古すぎて民泊の集客イメージがつかなかったことと、田舎出身の私は「都会で暮らしたい」という思いで札幌に出たので、「のんびりした町は合わないかも」という考えが頭の片隅にありました。ただ、長い間物件探しに苦戦していましたし、古民家を自分の好きなように改修できるというワクワク感に心惹かれて、中富良野町に足を運ぶようになりました。
―物件を引き継ごうと決めた理由を教えてください。
中富良野町に通ううちに、このまち特有のゆったりとした空気感や人の温かさにひかれました。知り合いが増えるたびにここでの暮らしが自分ごとになり、「このまちにいたら面白そうだな」と考えるようになったんです。「田舎では暮らせない」と思っていた私ですが、中富良野町は生活もしやすいですし、歳を重ねて好む環境も変わってきたのかもしれませんね。
当初は、地域おこし協力隊への応募は考えていなくて、飲食店と民泊のオーナーとして暮らす計画を立てていました。ですが、家庭の事情で一度計画が頓挫してしまって。諦めかけていた時に、役場の方が「地域おこし協力隊という形で中富良野町に来るのはどうですか」と声をかけてくれました。
そのご縁でこうして、週4日は中富良野町で地域おこし協力隊業務、週末は札幌で過ごす生活をしています。役場の方の親身で柔軟な対応があったからこそ、今の私があるなと感じています。
―これから作り上げる新たな拠点をどんな場所にしたいですか?
旅行に出かけた時に心がおどる瞬間って、私は人との交流だと思っています。準備中の飲食店が、地元の人と観光客を自然に引き合わせる場所になったら嬉しいですね。
物件は、築60年の大きな木造2階建てなので、1階を民泊スペース、2階を私の住居にするか構想を練っている段階です。
飲食店では、お昼は3品程度のおかずがのったワンプレートランチ、夜は地元の人も観光客も気軽に立ち寄れるようにおばんざいを用意しようと思っています。おかずをテイクアウトしてもよし、お酒を酌み交わしてもよし。誰もが気軽に立ち寄れるような空間にしたいです。
これから取りかかる改修は、できるだけDIYで進める予定です。町内外から改修に興味のある方を募って、DIYを学ぶ講習会を開こうと思っています。たくさんの方に改修の段階から関わっていただいて、建物自体に親近感を持ってもらえたら嬉しいです。
地域課題のリアルを知ってもらい、事業開発のヒントを見つけるサポートを
―民泊の開業準備を進める一方で、「テレワーク推進コーディネーター」として活動する清水さん。中富良野町のテレワーク事業や担当業務について教えてください。
中富良野町では、ワーケーション誘致の一環として企業向けの農業体験プログラムを企画しています。現在は大手自動車メーカーの若手社員が年に4回中富良野町を訪れて、地元農家のもとで苗植えや収穫といった農作業を体験しています。プログラムを通して、地域課題の収集や製品開発のヒントを探る機会になることを目的としています。
体験日には、私や役場の担当者もつなぎを着て一緒に農作業をすることもあります。年間を通した活動なので、回数を重ねるごとに参加者との仲が深まるのが嬉しいですね。
ほかにも、町営のテレワーク施設「まちなかオフィス」の受付を担当する日もあります。まちなかオフィスは中富良野町駅から徒歩2分と立地もよく、個人利用デスクに加え、個室やミニキッチンも完備していて、ワーケーションでいらした道外の方にも利用されています。
地域おこし協力隊の仲間と歩む。知るほどに愛着が増す、中富良野町の暮らし
―他の協力隊との関わりはありますか?
中富良野町には現在18人の地域おこし協力隊が在籍しており、月に一度、全員で報告会を行っています。役場の職員に向けた報告でもあり、隊員同士で活動内容や今後の予定を共有することで、イベントのお手伝いができたり、困った時に声をかけることができます。人数が多く、活動拠点もさまざまなので、意識的に顔を合わせることに意味があると思っています。
ほかにも、新年度には新しくやってきた地域おこし協力隊向けに「町内ツアー」と題して町を案内するのですが、今年は私たち2年目の隊員がアテンド役を担当しました。地元の飲食店やギャラリーなどを訪れて、私自身もこの1年で地域と築いてきた関係性を振り返ることができました。
―最後に、中富良野町への移住を悩んでいる人にアドバイスはありますか?
私の家の前には富良野川が流れているのですが、仕事終わりの夕方5時頃、川沿いのベンチで飲むビールが最高なんです。景色が雄大で空気は穏やかで、こんな贅沢はそうそうないと幸せをかみ締める瞬間です。
中富良野町はまちの人も役場の人もとても親切で、知れば知るほど好きになるまちだと思います。もし少しでも迷っているのであれば、ぜひ一度来てみてほしいです。このまちの素敵なところをたくさん紹介させてください。
取材・執筆:八子結奈
SAGOJOの旅人/ライター。情報誌の編集記者を経て、現在はフリーで活動中。暮らしや文化、地方創生にまつわる執筆実績多数。