中富良野町で “地域のお手伝い × 宿泊無料” 旅人と地域をつなぐ新しい旅のスタイルに挑む【地域おこし協力隊インタビュー】
2025年4月から北海道 中富良野町の地域おこし協力隊として活動する山田 純也さんは、「旅×シゴト」をコンセプトとしたサービスを運営する株式会社SAGOJOに所属し、滞在拠点『TENJIKU中富良野』のオープンを進めています。
『TENJIKU(テンジク)』とは、旅人が全国にある拠点に無料で宿泊しながら、地域課題を解決する “ミッション” を通して、地域の人たちと深く関わりながら “仲間” になれる新しい旅体験を届けるサービスです(https://tenjiku.sagojo.link/)。
民間企業の一員として地域に関わる地域おこし協力隊の働き方とは。山田さんに話を伺いました。
編集者からフラワーデザイナー、多様なキャリアを積んでたどり着いた中富良野町への移住
―今年4月から中富良野町での暮らしが始まった山田さん。まずはこれまでの経歴を教えてください。
3年ほど前に地元を離れるまで、人生の大半を大阪で過ごしました。大学を出てフラフラしていたところ、設計事務所に拾っていただき、3ヶ月ほどポルトガルに滞在して、和食レストランの内装工事をする機会に恵まれました。
海外で暮らす感覚が新鮮で、日々の様子をブログにつづるようになりました。すると、そのブログが想像より多くの反響をいただくようになりました。次第にブログの運営が楽しくなり、もっとメディアに携わりたいと思うようになって、旅雑誌などを制作する大阪の出版社に転職。7年ほど編集・エディトリアルデザイナーとして働きました。
編集者として地域のお店を取材でまわっているうちに、店員さんと親しくなったり、町に馴染んでいく感じが嬉しかったですね。この頃から、「地域」や「まちづくり」といったワードを意識するようになりました。
コロナのタイミングで思いきって大阪を出て、軽井沢に移住しました。これまでの「デザイナー」「地域」という軸に加えて、これからの武器になるような知識や技術を身につけようと、フラワーデザイナーとしてお花・植物などの自然を扱う仕事に就いて、花の装飾技術などを学びました。
繁忙期は休みもないような生活でしたが、充実した学びを得られた日々でした。軽井沢の空気も中富良野のように爽やかで本当に暮らしやすい場所でしたね。
―そんな山田さんが中富良野町に来ることになったきっかけは?
不思議な巡り合わせで、友人の友人がSAGOJO代表の新 拓也だったんです。たまたま一緒にキャンプに行って、お話しする中で「SAGOJOで働きたい!」と強く思い、新くんにその場で猛アタックしました(笑) その後、「中富良野がすごく山ちゃんに合いそうで、『TENJIKU』を立ち上げてほしい」とお声がけいただきました。
中富良野への移住は悩みましたが、開業のキーワードとしてあがる「DIY」や「まちづくり」、「花の景観地・中富良野」という条件がこれまでの経歴と驚くほどぴったり重なっているんですね。周りの友人にも背中を押されて、中富良野に行くことを決めました。
地域の事業者と共に、中富良野町に北海道初の『TENJIKU』をつくる
―現在、開業準備中の『TENJIKU』。そのサービス内容を詳しく教えてください。
TENJIKUは、地域課題を解決する “ミッション” を通して、地域の人たちと深く関わりながら “まちの仲間” になれる新しい旅体験を届けるサービスです。旅人が地域のお困りごと解決に協力することで、宿泊場所を無料で提供します。僕たちはTENJIKUにやってきた旅人を地域の事業者さんとマッチングし、旅人には事業者さんのお手伝いをしてもらいます。中富良野だと、ラベンダーの種まきや手入れ、農家さんの収穫サポートなどがイメージしやすいかと思います。
TENJIKUは、旅の価値を向上させることを目的に、北は青森、南は福岡と全国各地15ヶ所に拠点を広げています。その中でも、中富良野は北海道内の第1号拠点です。
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―開業準備は順調ですか?
今秋のプレオープンを目指して絶賛奮闘中です。行政とSAGOJOの共同運営なので、携わっている人の数も多く、各所との連携や申請、許可取りなどが大変ではありますが、北海道初のTENJIKUの運営者として気を引き締めて取り組んでいきます。
開業準備の要でもある物件探しでは、教員住宅だった3LDKの平屋を候補にあげました。ロケーションをとるか利便性を取るかで迷ったのですが、交通機関を使う旅人のことを考えJR富良野線が通る西中駅に近い場所を選びました。
施設の運営に加え、僕たちTENJIKUのスタッフは旅人を受け入れてくれる事業者さんとの信頼関係が肝となります。事業者さんの元へ足を運び、顔を合わせて話をすることも心がけています。
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心に残る旅が、人とまちをつなげる一助に
―山田さんが目指す中富良野の『TENJIKU』の姿は?
関係人口というと抽象的ですが、「また中富良野に行きたい!」と思ってもらうためのきっかけを作る場所でありたいです。居酒屋で知らない人と話した時のドキドキとした時間がその後も心に残ることってありますよね。そんな心に残る時間を旅人に提供したいと思っています。
―今後の展望を教えてください。
地域と旅人のつながりを強化できるTENJIKUの仕組みが反響を得て、北海道全域に認知されたら嬉しいですね。地域活性化のモデル事例になってほしいと思います。また、協力隊の任期は3年と決まっているので、TENJIKUのことも自分の進路についても3年後を見据えて動いていこうと思っています。
―中富良野町への移住を検討している人にアドバイスをください。
中富良野町は僕が来る前から役場の方や町の人たちが未来への種まきをしていて、3年後・5年後にまちの様子が大きく変わると思っています。観光都市としてすでに多くの人が遊びに来ていますが、これからは来訪者一人ひとりとまちのつながりがより濃くなる気がしますね。TENJIKUもその一端を担えるように頑張りたいです。
まだまだ可能性のあるまちですし、やってみたいと考えていたことを、場所を変えて挑戦してみるのも面白いですよ。中富良野町に興味を持ってもらえたら、ぜひTENJIKUにも遊びに来てくださいね。
取材・執筆:八子結奈
SAGOJOの旅人/ライター。情報誌の編集記者を経て、現在はフリーで活動中。暮らしや文化、地方創生にまつわる執筆実績多数。