新しい旅行ガイドのかたちを模索する『ことりっぷWeb』が旅人を募集
心地いい旅って、なんだろう。
今回、SAGOJOで旅人を募集するのは、『ことりっぷWeb』。
ことりっぷは2008年、新しいかたちの旅行ガイドブックとして創刊。20-30代の女性をターゲットに、女子旅ブームとともに瞬く間に旅の定番アイテムになりました。しかしことりっぷが、2013年にWeb版をオープンし、さらに2015年にリリースしたアプリはすでに20万ダウンロード突破と好調で、さらに新しい旅行ガイドブックのあり方を模索していることは、もしかしたらまだ、あまり知られていないかもしれません。
今日は、ことりっぷのWeb版・アプリ版をプロデュースした平山高敏さんに、ひとり旅が趣味のモデル・深沢純さんがことりっぷの考える旅ってどんなものなのか、話を聞きに行ってきました。女性向けの旅メディアを作ってきた平山さんに、深沢さんが女子目線で切り込みます。

話を聞いた人
平山 高敏さん
2012年に昭文社入社後、2013年『ことりっぷ』のWeb版を、2015年にはアプリのリリースを担当したプロデューサー。横丁で飲むのが好き。
話を聞く人
深沢 純
旅ばかりしている長崎発カステラ系モデル。旅をしていない時は駄菓子を使った変な料理をブログにあげるのが趣味。インドカレー店から離島まで、どこへでもひとりで乗り込む。
ことりっぷ =「女子旅」のイメージ、あります
人気ガイドブック ことりっぷと振り返る♪日本の女子旅10年史
深沢:
今日は『ことりっぷ』が旅をどんなふうに考えているのか、伺いに来ました! よろしくお願いします!
平山:
はい、お手やわらかに、お願いします!(笑)
深沢:
ことりっぷといえば「女子旅」っていうイメージがあります。でも「女子旅」と言ってもいろいろありますよね。
行き先がどこかよりも、友達と喋れることが大事!みたいな女子旅とか、こんな旅行してる私充実してるでしょ?ってSNSに上げるのが目的みたいな女子旅とか(笑)
ことりっぷの考える女子旅って、どういうものなんですか?
平山:
そうですね。実は、ことりっぷが創刊された当初は「女子旅」というキーワードは訴求として使っていませんでした。でもグーグルで検索されている回数を調べると、『ことりっぷ』が世に出た2008年ころから、「女子旅」と「ことりっぷ」が同時に伸びてきているんです。世の中の風潮にたまたま合ってたんですね。
そして、今では「女子旅」というキーワードを使うようになりましたが、一方では2世代でご利用いただいたり、大学生、はたまた私のような男性まで、年齢や性別を超えて使っていただいています。
旅の「心地よさ」ってなんだろう
平山:
初めは20代30代の女性をターゲットにしていたのに、女性だけでなく広く買ってもらえるようになったのはどうしてなんだろうと思って、数年前からヒアリング調査をしているんですけど、そこで見えてきたキーワードが「心地よさ」だったんです。
深沢:
心地よさ、ですか?
平山:
旅行に行くときでも、社会人はがんばって働いていると2泊3日とかしか休み、取れないことが多いじゃないですか。だから情報量が多い「全世代向け」みたいなガイドブックだと、行く場所を選ぶのも大変だし、分厚いから重たいし、デザインも派手でちょっとテンションが合わない。

だから『ことりっぷ』は、掲載するのは情報を絞り込んで、使う人の心地よさを追求した内容やデザインにしているんです。紙も、実はすごく軽い紙を使ってるんですよ。
深沢:
へー。確かに、小さくて軽いですよね。
平山:
観光地をガンガンめぐって、という旅もそれはそれで面白いと思うんです。でもマイペースに回りきれる範囲の中でゆったりと過ごせて、現地のことをちょっと知れるような場所に行くような旅をしたい人も増えてますよね。
赤ちょうちんにひとりで入る「心地よさ」
深沢:
「心地よさ」ってちょっと漠然としていると思うんですが、ゆったり過ごせる旅が「心地よい」旅ってことなんですか?
平山:
うーん難しいですね。「心地よさ」って、人によって違うと思うんです。表参道にある可愛らしいお店とか、景色が見えて空間が抜けているような店を「心地よい」と感じる人も多いですが、赤ちょうちん系のお店や純喫茶など、人情味あふれるお店でのコミュニケーションに心地よさを見出す人もいます。
深沢:
赤ちょうちんのあるお店、いいですよね。私もお酒好きなので、よく高円寺なんかで一人飲みしますよ。
平山:
あ、深沢さんも一人飲み、しますか!
深沢:
お酒、大好きなんです。このあいだ母に、ビール飲んでるときが一番いい顔してるって言われました(笑)
平山:
深沢さんが赤ちょうちんで一人飲みする時って、どういうところを楽しいと感じますか?
深沢:
そうですね、誰にも気を使わず一人で飲むことの充実感ってありますね。あとは「私、こんなお店で一人で飲めるようになったんだ」って、大人になった感じを楽しみたいのかもしれません(笑)
あたらしい旅の「心地よさ」をユーザーと一緒に考える

深沢:
でも私だけじゃなく、赤ちょうちんに行く女性って増えているような気がしますね。
平山:
もしかしたら、人が感じる「心地よさ」の幅は広がってきているのかもしれませんね。
でも書籍だと、ユーザーさんの声を反映するのにタイムラグが発生してしまうんですね。書籍って本屋さんで買われるのを待っているようなメディアなので、そう簡単に変われないんですよ。
だからWeb版とアプリ版を作ったんです。Webだと、お客さんがどういう記事を求めているのかが数字ですぐに分かるし、アプリではユーザーさんからの投稿もある。そういうユーザーさんからの発信と共鳴しながら、我々の発信も変えていくことができるんです。

深沢:
ことりっぷのアプリはまだ使ったことがないんですけど、どんな感じなんですか?
平山:
『ことりっぷ』アプリは2015年から始まったんですけど、Webに載せてる記事や、書籍掲載のスポット情報を見ることができる他に、ユーザーさんが自分の撮った写真を投稿できるようになっています。ユーザーさん同士で、おすすめスポットを紹介しあうコミュニティとして機能しています。
「私も旅好きだから、他の旅好きな人にも紹介しよう」という、ユーザーさん同士の一体感みたいなものがあるんですよ。写真もみなさんとても上手いんです。
「#ことりっぷ」の不思議
深沢:
これ、ちょっとインスタっぽくもありますね。ハッシュタグが付いて。
平山:
そうですね。じつはインスタでも「#ことりっぷ」を付けて投稿してくれる人がいるんですが、これが面白いんです。
書籍のことりっぷが写り込んでいるような写真もあるんだけど、ふつうの旅先の風景とかに「#ことりっぷ」ってつけてる人もいるんですよね。
ことりっぷアプリに投稿された、知る人ぞ知る羽生市の名物。もっちり庵のもっちり焼き
深沢:
あ、そういう投稿、私も見たことある気がします!
平山:
そういう方の写真を見ると、自分なりの目線で旅先の風景とか出会ったものを撮りながらも、あくまでも「紹介」に徹していることが多いんです。「自分はこう感じました」っていう、スポットに対するその人の感じ方が伝わるような投稿が多いんですよね。
深沢:
なんとなく「ことりっぷっぽい感じ」ってありますよね。
平山:
そうなんです。ぼくたち作り手だけじゃなく、ユーザーの方たちの中にも「ことりっぷっぽい感じ」があるんですよね。
その「ことりっぷっぽさ」「心地よさ」っていうのを、ユーザーさんとの共鳴のなかで作っていきたいんです。アプリに投稿機能をつけたのは、ユーザー同士が交流して共鳴しあえる場を用意して、どういうのが「心地よさ」なのかというのを、ユーザーさんと一緒に探っていくためなんです。
地域のパートナーメディアと試みる、新しい旅行ガイドのつくりかた
平山:
実はことりっぷアプリで地域の魅力を発信しているのはユーザーさんだけじゃなくて、現地のローカルメディアさんが発信できる仕組みも導入しています。
ここ数年、自分の住んでいる街をご自身の視座で魅力を切り取って伝えるメディアが増えているのですが、みなさん、非常に思い入れがあってご自身の街を紹介しているんですね。
たとえばこの、長崎県の松浦市を拠点に活動している「minnanoIE(みんなのいえ)」っていうポータルサイトでも、ことりっぷのパートナーメディアとして投稿してもらっています。
深沢:
え! 私、母の実家が長崎県松浦市なんですよ。そんなWebサイト、あったんですね!
平山:
お母さま、松浦市ご出身なんですか! 松浦市、つい最近行きましたよ。
パートナーメディアの狙いは大袈裟にいえばWebにおける「ガイドブックの再定義」でもあるんです。

ガイドブックの制作過程はざっくり言えば、現地に飛んで、取材して情報を集めて、編集部でまとめるという流れです。でもWebの世界でおなじことをやっても、スピード感やメディア特性に違いがあり、良さを発揮しにくいんです。
そこで「ことりっぷ」が培ってきた媒体力を活かして、「現地の発信の場」をつくることを考えたんです。現地にいる人が発信する方が早いし、説得力がある場合もありますから。
深沢:
なるほど。だからことりっぷでは、地元の人も発信できるようになってるんですね。
平山:
そうですね。実際に住んでいる人が地元を紹介するサイトって、ほんとうに面白いものが多いんですけど、京都とか横浜クラスの有名な場所でないと、それぞれのサイトの規模は小さいのが現状です。なかなか大きく広げていって、都市部の人にまで届けるのは難しいんです。だからことりっぷがそれを繋ぐ場になって、彼らのアツい思いを伝えていきたいんです。
深沢:
ゆかりのある街って、すごく応援したくなりますね。私も松浦の面白いところ、もっと知りたいです。
「ことりっぷ」しながら語る旅の話
ここから、話題はふたりの旅とSAGOJOで募集したい旅人の話に。
ことりっぷ編集部のある麹町から地下鉄で5分の神楽坂にて「ことりっぷ」しながら語っていただきました。
ここからはことりっぷ編集部のある麹町から神楽坂へ移動して、街歩きをしながら話します。
〈わたし〉を壊してくれるのが、旅の「心地よさ」かも
平山:
ところで深沢さんは旅が好きなんですよね? どうして旅をするんですか?
深沢:
んー、そうですね。旅をするのは、自分の知ってる範囲から外に出るためですね。知り合いのいない、地域の文化も知らない場所に行って、自分なんてちっぽけなんだって確認しに行っているんだと思います。
ここに人は私だけw
— 深沢 純 (@Kamn713) April 15, 2016
なんだこれ、凄い世界。
そしてデカすぎる馬と牛が普通に野放しでびびってる。#島根県 #隠岐の島 pic.twitter.com/qf4bJeR5zd
平山:
考え方が凝り固まらないように、みたいな?
深沢:
そうですね。思い悩んだときなんかに旅に出たくなるんですよ。「私の思ってることなんてちっぽけなんだよ」って、自分に言い聞かせるために旅に出てるのかもしれません。
旅の「心地よさ」という話がありましたけど、もしかしたら私にとっては、凝り固まった自分の枠を壊してくれるのが旅の「心地よさ」なのかもしれません。
「観光」より、消費されない「旅」をつくりたい
平山:
そうですね。最近は観光地を見て、食べて、買って楽しむ、という旅だけではなく、体験や現地の人との触れ合いを求める人が増えていると思うんです。
深沢:
たしかに!
平山:
でも人との交流って不思議と残りますよね。だから、これからより求められる旅は、現地にいる人との関係性を軸にした旅なんじゃないかと思うんです。
つまり、旅を終えた後も心のどこかに残っていて、その地域についてふと耳にしたとき、現地で関わった人につい思いを馳せてしまうような旅。そういう、自分の中の小さな引き出しになるような旅がこれから求められる気がしていますね。Web上のコミュニティというのも、それを実現するために役に立つと思うんです。
昔懐かしい感じのおもちゃが並ぶ店先で
旅先でみつけた魅力を〈自分のテーマ〉と〈あふれる気持ち〉で伝えてくれる旅人、募集します
深沢:
今回の旅人募集ではどんな旅人を募集するんですか?
平山:
そうですね。今回は山でもコーヒーでも酒場でもいいのですけど、自分なりに旅を通じて伝えたいテーマを持っていて、それを提案していただける方がいたら、ぜひお願いしてみたいと思います。
そして実際に旅をしてもらって、自分が見てきた場所の良さとか「ここに行ってよかった!」という熱量みたいなものを、自分の視点で伝えてもらいたいですね。
ことりっぷのユーザーの方が読んで、ふと「ああ、この人がこんなに言うなら行ってみたいな」って思えるような記事を、私も読んでみたいと思っています。
深沢:
そんな旅人の方、見つかるといいですね。平山さん、今日はありがとうございました!



