※ 今回のシゴトは再募集案件です。前回の募集を逃してしまった方からのご応募をお待ちしております!
アウトドアメディア『.HYAKKEI』、海外登山&アウトドアの魅力を伝える旅人募集!
みなさんアウトドア、好きですか?
このたび、アウトドアメディア『.HYAKKEI』さんが、海外アウトドアに興味があって、それを現地での体験・インタビューから紹介してくれる旅人を募集することになりました。ご好評につき、再度掲載です。
海外のアウトドアと言っても本格的な登山からカジュアルなトレッキングやキャンプまで、いろいろ。募集する旅人も、ベテランから初心者の方まで幅広いのですが、でも海外登山については、そんなに誰もがやったことがあるわけじゃないような気がします。
そんなわけで今回は、海外登山経験も豊富な旅人・伊藤篤史さんが、海外登山にはまるきっかけとなった、はじめての海外登山体験をふりかえりながら、海外登山体験の魅力と注意点を紹介します。

書いた人:伊藤 篤史(いとう あつし)

1984年福島県生まれ。パンク修理も分からないまま飛び出した学生時代のアメリカ横断自転車旅行で旅の面白さを知り、世界一周を志す。4年間の社会人生活を経て、2011年6月、自転車世界一周旅行に出発。4年半で走行距離73,000㎞、71ヶ国を訪問。世界で一番好きな場所はキルギスのソンクル湖。
海外登山って大丈夫?―実は身近な海外登山
登山が好きで毎週末、日本の山をあちこち登っているという人は多いでしょう。美しい山の写真や映像を目にすれば、そこに登ってみたい! と思うのは山好きの本音のはずです。
でもそれが、海外の山だったとしたら? ちょっとだけ敷居が高く感じてしまう人もいるかもしれません。海外登山には興味があるんだけれど、標高も日本の山よりも高そうだし、高山病も怖い、迷った時はどうやって助けを呼べばいいのだろう……。よぎる様々な不安のせいで踏み出し切れないかもしれません。

けれど、日本の山を歩ける技術と経験があるのならば、海外の山も歩ける、これは断言できます。世界中どこへ行っても、標高が高くても低くても山の基本は一緒なのです。
日本の山でも同じように、海外の山でもまず大事なことは、山の難易度を見極めること。山小屋はあるのか、コースタイムや日数はどのくらいかかるのか、アイゼン(積雪時に登山靴の裏に装着する滑り止めの爪)を使う場所があるのかなど、自分の経験とすり合わせて少しずつ経験値を積んでいけば、5000m峰や6000m峰、各大陸最高峰も夢ではありません。
勇気を出して、一歩踏み出してみる。するとそこでは、群青色の空に突き刺さる尖った岩峰や、手を伸ばせば掴めそうなほど近い夜空の星屑、森林限界を越えた先に広がる荒涼とした原野など、日本とはまた違った、異国のスケールの自然があなたを受け入れてくれることでしょう。
そして踏み出した先に広がる景色は、きっと次なる新しい世界へ導いてくれる。そんな可能性を秘めています。

ここではぼくが初めて挑戦した海外登山のマレーシア・キナバル登山の紹介を通じて、実は身近な海外登山の魅力をお伝えしたいと思います。
東南アジア最高峰! はじめての海外登山体験
ぼくが初めて登った海外の山はマレーシアのキナバル山。マレー半島本土ではなくてボルネオ島に位置しているこの山の標高は4095m。富士山よりも約300mだけ高いというのは具体的な高さのイメージが湧きやすく、それでいて標高が4000m台の大台に乗っているというのも一つの大きなモチベーションでした。東南アジア最高峰としても知られ、国や地域で一番高い山というシンプルな分かりやすさも、登ってみようという意欲を引き出してくれたのだと思います。
キナバル山は海外登山入門者にとって身近な存在で、たくさんの日本人が山頂に足跡を残しています。「富士山よりも高いけれど、富士山よりもお手軽に登れる」なんて声もあるようでした。

世界遺産としても登録されたキナバル山は、道中のトレイルもしっかり整備されていて、ガイドの同伴と場合によってはポーターも雇うこともでき、サポート体制もバッチリ。たくさんの日本人が登っている山だけあって、一部のガイドは簡単な日本語を知っていたりしました。
基本行程は一泊二日となりますが、一日の入山者制限があるために、すし詰めになった山小屋で宿泊……なんてこともないのも嬉しいところ。しっかりした二段ベッドで体を休めることができます。ビュッフェ形式で提供される夕食はミーゴレンなどのマレーシア料理で、食事風景は異国情緒たっぷりでした。
熱帯の森を抜け、山頂で迎える御来光
お手軽な山だと登り応えもないんじゃないか……。そんな心配もご無用です。
赤道直下の山なので山麓にはジャングルが広がり、1800m地点の登山口からは雲霧林と呼ばれる、年中、雲と霧の停滞する湿潤な森になっています。樹木には苔や着床植物がびっしりと生え、食虫植物のウツボカズラを目にすることも。そんな熱帯ならではの景色が広がります。
雲霧林を抜けると、花崗岩が露出した高山気候へと変化し、山小屋を過ぎたあたりから徐々に森林限界を迎え、山頂のある4000m付近は岩の世界。僅かに草が生えるだけです。 標高とともに多様に変化する植生もこの山の面白さだと感じました。
山小屋から山頂への道中はロープの張られた場所もありましたが、足場がしっかりしているので難しいところはありません。

ローズピークと呼ばれる最高点で迎える御来光は感動の一言。世界中どこへ行っても朝日の美しさは変わりませんね。山頂で少し休憩し、日が完全に昇る頃には見渡す限りの雲海が足元に広がります。あまりにも清々しい空模様に、果たしてここは南国なのだろうかと不思議な錯誤感に襲われました。
「新しい自分に出会う旅」―海外登山の醍醐味
このキナバル山登山以来、ぼくはすっかり海外登山に魅了され、世界中の山々を登ることになります。エクアドルで登ったコトパクシ山は地球の中心からの距離で言えばあのエベレストよりも高く、ボリビアのワイナポトシ山では初めて6000mの大台にも立ちました。六大陸最高峰の一つタンザニアのキリマンジャロにも登ることができました。

富士山よりも遥かに高く、遠く感じてしまう山々も、少しずつ難易度をあげて技術と経験を積み、しっかりと準備をすれば「案外」登れてしまうもの。ぼんやりとしか分からなかった4000mや5000mの感覚がはっきりとした手応えに変わる。この快感は登った人だけの特権だと思います。そして、その山に登るために必要なものは何かを見つめることは、自身の内面と向き合うことでもあり、それは新しい自分に出会う旅でもあるのでした。
また、登山だけでなく、海外トレッキングも世界のあちこちで体験してきました。海外には何日もかけて歩くようなトレッキングコースがいくつもあり、肩にずっしりとした荷物の重さを感じながら地面を踏みしめて歩く感覚は、まさに「地球を旅している」感覚。日本では見られない氷河や大峡谷、あるいは果てしなく広がる草原を歩くことで、異国のスケール感を体に刻み込むことができると思います。

注意点とアドバイス―海外登山で気をつけたいポイント6つ
「実は身近な海外登山」……とは言っても、油断をすれば大事故や命の危険があることはどこへ行っても同じです。ここでは海外登山の際に注意したい、いくつかのポイントをまとめました。意外と現地で準備できるものも多いので、すべて日本からガチガチに揃えていくのではなく、小物や行動食などは現地のマーケットで用意してみると、海外登山をより楽しむことができたりするものです。
1. 高山病―無茶な登山は危険!
高所登山でもっとも気を付けなければいけないのが高山病。酸素の薄い高地での活動により、頭痛や吐き気、手足のしびれなどが発症し、最悪の場合、死に至る病気です。高所に対する適正は人それぞれのため、体力自慢の若い男性でも発症する可能性があります。高山病は高度を下げない限り治ることがなく、酸素ボンベや薬に頼った無茶な登山は絶対にしないこと。高山病予防には、睡眠をしっかり取る、こまめな水分補給、深呼吸を心掛けるなどありますが、最大の予防は、余裕を持ったスケジュールを組み、体を高地に慣らすことです。

2. 日程―スケジュールには余裕をもって
高山病の項目でも書いたように、登山成功の最大のポイントは余裕を持ったスケジュールです。ベースとなる街に到着したら、観光も兼ねて数日間体を慣らし、登山行程中も予備日を設けると、悪天候にも対応しやすく、登頂の確率はグッと高まることでしょう。
3. 服装―持っていくものと現地調達
場所や利用するツアー会社によっては登山ウェアや道具の貸し出しを行っていることがあります。ただ、状態が悪かったり、サイズが不揃いだったりすることも多いので、借りる場合は必ず事前チェックを行いましょう。
特に外に着るハードシェルに関しては防水性が落ちていることも多く、また、靴に関しても足に合わないことがあるので、この二つに関しては自分に合ったものを用意しておくことをおすすめします。
反対に、保温用に着用するフリースや帽子などは現地に売っているものでも十分温かいので、現地に到着して「ちょっと不安だな」という場合は買い足すのもありでしょう。可愛い柄の帽子を見つければ自分へのお土産にもなります。
4. 食事―「ハンガーノック」に注意!
旅行会社のアレンジする登山の場合は大抵食事がつきますが、万が一つかないこともあるので必ず事前チェックすること。食事メニューは誰でも食べやすいシンプルな料理が中心ですが、アレルギーなどがある人は要相談。
また、エネルギー補給をせずに行動を続けていると、低血糖で途端に動けなくなってしまう「ハンガーノック」という状態になる場合もあるので、休憩時には適度に行動食(携行食)を食べてエネルギー補給を行いましょう。チョコレートやナッツ類はカロリーが高く、エネルギー補給にぴったりです。日本からお気に入りの行動食を持参しても良いですが、これらは現地のスーパーマーケットでも簡単に手に入ります。

5. 荷物―予備を持ちたいものについて
体力を少しでも温存するために、荷物はできるだけ軽くしたいところ。しかし、絶対に削ってはいけないものがあります。
特に手袋はふとしたタイミングで風に飛ばされたりと、失くしやすいアイテムの一つ。必ず予備を用意しましょう。とりわけ氷点下で紛失して、予備を持っていないと凍傷の恐れがあります。
また、山頂で御来光を見る場合は、暗闇の中で山頂アタックとなります。いざヘッドランプをつけようとしたら電池切れ……ということもあります。事前の電池チェックも必須ですが、カバンの中での誤作動による消耗や、低温で急激に電池残量が減る場合もあります。予備電池は忘れずに。
6. その他―ガイド、ポーターについて
海外登山に慣れていない方は必ずガイドを雇いましょう。旅行会社に相談すれば紹介してもらえます。ガイドは道中の危険な個所を熟知し、優れた嗅覚で珍しい動植物も見つけてくれるので、道中が意外と地味であっても楽しみながら登ることができるでしょう。
また、体力に不安がある方はポーターを手配することも一案です。ただし、ポーターに荷物全てを預けてしまうと、彼らは食事の準備のために先行する場合や後片付けで遅れる場合もあり、急な天候の変化や喉が渇いた時に対応できないのでご注意を。
そして誰しも気になるのが下山後ガイド、ポーターに支払うチップ。登山前に支払額の話し合いをしておき、予想以上によかったらそこに少し上乗せするという方法がよいでしょう。チップで生活しているポーターも多いので、相場以上に値切るのは厳禁です。お互い気持ちいい下山を迎えましょう。

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写真・文:伊藤篤史 編集:スガタカシ

